本と映画と政治の批評
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NHKスペシャル「源氏物語 黄金絵巻の謎」 - 千年紀特集を見る
b0090336_1455752.jpg今年は源氏物語千年紀で、文化の日のNHKスペシャルでも源氏物語の黄金絵巻の特集が放送されていた。雅な源氏物語の世界に浸り、千年紀を祝いつつ思いを馳せるには、今年はあまりに激動の年であり、世界恐慌の現実と王朝文学の風趣とのコントラストに戸惑いを感じるが、こういう時代だからこそ、人は心の豊かさを求め、日本文化の神髄を確認しようとするのだろう。千年紀に世界恐慌が合わさったのは、歴史の皮肉と言うよりも、源氏物語の懐の深さとして受け止めるべきかも知れない。番組は面白く、文化の日のNHKの特集にふさわしい内容だった。黒木瞳を案内人に選んだ点もいい。黒木瞳が出るという予告を聞くと、やはり気になってテレビの画面を覗きこんでしまう。現在48歳。美貌は衰えず、むしろ可愛さを増し、見る者を常に驚かせる。昨年の「24時間テレビ」に出演した際のTシャツとデニムのミニの姿も鮮烈だった。日本の女の全ての魅力を最高に持ち合わせた存在。老けないエンジンを内面に持っている。女ならば誰でも黒木瞳に憧れる。



b0090336_1461220.jpg源氏物語絵巻と言うと、従来、われわれが見知っているのは、徳川美術館に収蔵されている国宝で、平安期に制作された最古の一作であり、日本史や古文の教科書に写真が載っているものだが、現在、研究者の間では16世紀から17世紀に作成された源氏絵に関心が集まっている。その研究のブームを作った主役が、フランス国立東洋言語大学准教授のエステル・レジェリーで、全世界に散らばる2500点の源氏絵を調査し、520点を全3巻に纏めた本をパリの美術出版社のセリエ社から刊行した。今回の番組はこの豪華本の日本語版出版の宣伝でもある。レジェリーによると、現存する2500点の源氏絵の9割が16世紀から17世紀、戦国時代から江戸初期に作られた作品だと言う。そしてその中でも特に注目されるのが、今回の番組で紹介された「黄金の源氏絵」で、絵の上下に描かれた金雲に大量の金を使い、さらに全200巻の空前の規模のものだった。従来の源氏物語絵巻は10巻から20巻であり、作品のスケールが異常に大きい。番組の後半は、これを誰が作らせたのかの謎解きが進行する。

b0090336_1462516.jpg幾つかの学説の中でNHKが有力として選んだのが、恵泉女学園大学教授の稲本万里子の仮説で、徳川初期の後水尾上皇が京狩野派の絵師に描かせたものという結論だった。このとき、徳川幕権の確立によって朝廷は完全に幕府の支配体制の一部に組み込まれ、禁中並公家諸法度の基本法によって政治権力の一切を喪失する。この時勢の中で後水尾上皇が公家文化の象徴である源氏物語の豪華絵巻を作成させ、文化は公家のものだという最後の抵抗意識を徳川幕府に示したのだと稲本万里子が解説を与えていた。10年ほど前、ジェームス三木の『徳川三代』が大河ドラマで放送されたことがあったが、このドラマの中で、徳川が京の朝廷から江戸の幕府に権威と権力を強引に奪い取って行く過程が生々しく描かれていた。幕権の確立の歴史を丁寧に掘り下げ、その意義の大きさを視聴者に示したジェームス三木の学問的知性と歴史認識の鋭さに感嘆した記憶がある。『徳川三代』のドラマの後半の展開を思い出すと、稲本万里子の説がよく頷ける。と同時に、武家のために琴奏者にまで落ちぶれる立場になった後水尾院の鬱屈も。

b0090336_1464179.jpg番組に登場した「黄金の源氏絵」は、パリの画商の手で売られた第十帖の「賢木」と、石山寺に所蔵されている第六帖の「末摘花」と、NY Public Library に所蔵されていた第三帖の「空蝉」があり、「賢木」が全6巻、「末摘花」が全3巻、「空蝉」が全3巻となっていた。「賢木」は画商によって絵巻が切断され、絵がバラバラに切り離され、切り売りされてコレクターの手元に渡っている。放送で紹介された限りでは、絵巻物の原型を保存しているのは、「末摘花」の3巻と「空蝉」の3巻だけしか確認がとれていない。源氏物語は全部で五十四帖、残りの「黄金の源氏絵巻」の行方が気になる。どこにあるのだろう。メトロポリタン美術館に所蔵されていた藤壺出家の場面を描いた一枚も「賢木」の一部で、パリの画商を通じて切り売りされたものだ。レジェリーが調査追跡して所在を確認したものは、番組では20点と言っていたが、恐らくすべて「賢木」が切り売りされた絵で、他の帖のものではない。日本の研究者の手で残りの「黄金の絵巻」を確認することが必要だ。想像するに、テレビでこれほど大きく宣伝された以上、文科省から事業として認められて来年度予算がつくのだろう。

b0090336_1465741.jpgNHKでは、9/14にも「新日曜美術館」で源氏物語の特集を放送していた。この番組にはフェリス女学院の三田村雅子が出演していて、久しぶりに三田村先生のお話を拝聴する機会を得た。源氏と言えば三田村先生である。三田村先生の源氏講義は素晴らしい。昨日の特集でも、どこかで出るのではないかと期待して見ていたが、残念ながら三田村先生の姿はなかった。16世紀から17世紀にかけて源氏絵の9割が制作されている事情について、9/14の「新日曜美術館」の中での三田村先生の解説が一つの回答を出している。三田村先生によれば、応仁の乱のあと、源氏物語が絵巻や貝合蒔絵や屏風絵の美術品として大量に制作されるのである。それは、応仁の乱で京が灰燼に帰し、寺社や邸宅など平安期以来の京の建築と景観が消失して、それへのノスタルジーが噴出したからだと説明されていた。そして、源氏物語の美術工芸世界への展開を推進し、それを積極的に担ったのは新興の武士階級であり、貴族の伝統文化を自己の内側に摂取することで、権力者としての権威を高める一助にしたのである。今回の番組の中でも、大内義興が描かせてハーバード大学に所蔵されている「源氏物語画帖」がその例として紹介されていた。

b0090336_1471322.jpg源氏物語が人々に読み継がれ、海外に多くの研究者が出てきていることは非常に喜ばしい。このことを考えながら思うのは、新自由主義と脱構築主義の問題である。例えば、中川秀直や前原誠司が盛んに提唱しているような、少子化対策と称して1000万人の移民を日本国内に入れ、低賃金労働者を輸入する政策などが実行されたら、源氏物語や万葉集はどのようになるだろうという不安と懸念である。それら日本文化はわれわれの教養であり、日本人のアイデンティティの重要な一部であり、学校教育で習得するものだが、中国や東南アジアから大量の移民が入ってきて、彼らが日本で子供を産んで育てた場合にはどうなるのだろうか。新自由主義の経済思想は、基本的に、国民の歴史的な伝統文化を破壊する属性がある。例えば、中国から1000万人の若年移民を受け入れ、彼らを日本で定住させ、米国の黒人やヒスパニックのような人口比にまで増えたとき、恐らく、彼らは国語の教育も変えるように要求するだろうし、万葉集や源氏物語は自分たちの伝統文化ではないと言いそうである。学校で数学や英語は真面目に勉強するが、古文は必要ないと言い出すのではないか。学校教育の内容は国家の基本経済政策と密接な関係がある。

b0090336_1472712.jpgわれわれは高度成長期に教育を受けた。だから源氏物語も万葉集も自分自身の神聖な一部である。新自由主義はそれを掘り崩し、源氏物語や万葉集の学校教育における位置を危うくするだろう。源氏物語や万葉集を知らなくてもいい空疎な「日本人」を大量生産しようとするだろう。新自由主義はそういう「国民」を作ろうとするが、実は、脱構築主義が全く同じで、動機は別ながら、従来の国民公教育を憎悪し、「国民」を否定し、「国語」を否定し、根無し草のようなコスモポリタンを作ろうとする。教育を米国的にしようとする点では脱構築主義者と新自由主義者は一致していて、日本の国民性を破壊しようとする動機と衝動で充満している。酒井直樹と子安宣邦の議論と主張が典型的だ。「国民」と「国語」の解体脱構築。だから、恐らく、酒井直樹と子安宣邦は(岩波文化人でありながら)中川秀直の移民政策に賛成だろうし、源氏物語や万葉集は学校で無理に教育しなくてもいいという立場だろう。彼らは「日本国民」が死ぬほど嫌いなのであり、日本人のアイデンティティという思想そのものを根本的に拒絶している。網野善彦もそうだ。左右の違いはあっても、「国語教育」の政策という点で新自由主義者と脱構築主義者の方針は一致する。新自由主義と脱構築主義は癒着する。

偶然の一致なのか、ハルトゥーニアンはシカゴ大学の研究者だった。酒井直樹もシカゴ大学だった。本当に偶然なのだろうか。新自由主義と脱構築主義。

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by thessalonike5 | 2008-11-04 23:30 | その他
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