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本と映画と政治の批評
by thessalonike5


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テニスコートの誓いとポストIMF - 新大統領とG20サミットの情勢
テニスコートの誓いとポストIMF - 新大統領とG20サミットの情勢_b0090336_1283175.jpg何故、『ベルサイユのばら』の三部会召集の場面を急に思い出したのだろう。鬱々と考えているうち、自分自身の中にある「直観」の正体を探り当てた。11月15日のG20金融サミットが三部会なのだ。そして、ASEM首脳会合初日の10月24日に人民日報第1面に掲載された石建勲の論評が、シェイエスの『第三階級とは何か』なのだ。三部会とはフランスの三つの身分(聖職者・貴族・市民)の代表が召集される身分制議会である。中世英国の議会と同じで、国王が王室財政の非常時に課税のために召集開催する。ブルボン家のフランス王国は戦争と奢侈のために財政が破綻、17世紀以降長く開かれていなかった三部会をルイ16世が召集する。王は貴族に税金を出してくれとせがみ、貴族が反発し、市民が体制改革を要求し、その対立が導火線となって革命の激動へと発展する。状況の構図は今度の世界金融危機と酷似していて、G20サミットは米国と欧州が新興国(特に中国)にカネの無心をするために開くものだ。カネ欲しさに中国やインドを会議に呼ぶのである。 



テニスコートの誓いとポストIMF - 新大統領とG20サミットの情勢_b0090336_1285457.jpgすなわち、中印露伯の4か国は三部会の市民階級である。カネを負担させるのなら権利も寄こせとG7(特に米国)にIMFの機構改革を要求する。11月15日のワシントンのG20金融サミットが三部会だった。人民日報の石建勲論評がシェイエスの『第三階級とは何か』の檄文だった。そして、今日(10/29)の日経の記事の中に「テニスコートの誓い」を見つけた。1面左肩の特集記事を読むと、「ブラジル、ロシア、インド、中国の四カ国は年内に財務相会合を開き、IMFに代わる国際機関をつくる議論を始める」と書かれている。この衝撃の情報に私は初めて接した。興奮を覚える。こうした国際経済の最新情報は、これまで常に田中宇がネットで報告してくれていて、それがアンテナの役割を代行していたが、この四か国会合の情報は、田中宇の記事には未だ紹介されていなかったはずだ。田中宇がこの情報をフォローするのは間違いない。このニュースは、例のメドベージェフの強気の発言をサポートするもので、ロシアとブラジルが本気でポストIMFを志向している事実の証明に他ならない。

テニスコートの誓いとポストIMF - 新大統領とG20サミットの情勢_b0090336_129690.jpg貧しい農村の家庭に生まれ、貧困の中で少年時代を送り、労働組合運動を通じて政治家への身を立てたルーラは、言わば生粋の反新自由主義者であり、その思想信条と政治路線をよく信用できる。中印露伯がミラボーとシェイエスとロベスピエールになる。世界が動いている。状況はまさにフランス革命前夜の様相を呈している。大革命が起きる前は、フランスの貴族も市民も農民も、誰もそこまで事態が進行するとは思わず、それは革命ではなく経済危機であったはずだ。危機と混乱と困窮であり、政治ではなく経済の問題だった。けれども経済的危機は必ず政治的危機であり、経済構造の破綻と崩壊は、その上に築かれた権力構造の崩壊を媒介する。さて、それでは、ブルボン王朝とアンシャンレジームの側は黙って指を咥えて事態を眺めているだけなのだろうか。あまり無理に現実の世界を歴史の世界に重ね合わせてはいけないが、米国と金融資本は彼らなりに対策を講じているはずだ。株価の反転上昇の機を狙う。その切り札は新大統領オバマの登壇であり、世界の救世主としての「新ニューディール」の宣誓と発揚である。

テニスコートの誓いとポストIMF - 新大統領とG20サミットの情勢_b0090336_1291998.jpgオバマを巻き返しの道具にして、米金融資本再興のモメンタムを作ること。G20金融サミットの日程を11月15日に設定したのは、11月4日の大統領選挙の後にする戦略的必要があったからだ。オバマ新大統領誕生の祝祭演出を盛り上げて、NYSEを反発させ、1万ドルを回復させて米国の底力を世界に見せつける。その勢いで11月15日のG20サミットに臨み、米国とG7に有利な会議の進行と決着を図る。G20サミットにオバマが来て、ブッシュ大統領の代わりにホストとなる。ワシントンの取材メディアはオバマを追いかけ、オバマをG20の主人公にして騒ぎ、メドベージェフやシンやルーラの発言を無視して画面と紙面から消す。首脳討論でもIMF機構改革は中身に立ち入った議論をさせず、ステートメントでは世界協調体制だけを強調し、中印露伯の新興国に資金提供の義務を負わせるように周到に仕向ける。11月15日のG20金融サミットの日程が決まって以降、米マスコミの大統領選報道の様子が変わり、オバマ当選を既成事実化した取材や報道が顕著になった。米金融資本の側はオバマで再生をめざす方向を決め、戦略を着々と練っているように見える。

テニスコートの誓いとポストIMF - 新大統領とG20サミットの情勢_b0090336_1293125.jpg中印露伯に名目だけのIMF理事職を与え、IMF体制の枠内に中国の膨大な外貨準備高を取り込むことができれば、ドル体制は安定し、ユーロと株の下落も一段落する。それが米国と欧州の狙いであり、グッド・シナリオである。ポストIMFの挑戦をかける新興4か国に対するカウンター・ストラテジーでもある。だが、バッド・シナリオもある。バッド・シナリオの中で最も大きな衝撃となる事件は、中国による人民元ドルペッグの停止と離陸だが、この問題は別稿で論じよう。今回は二つ挙げる。一つは今後も破綻新興国が増えることである。現在、デフォルトの危機に直面した国は5か国に上る。アイスランド、ハンガリー、ウクライナ、パキスタン、ベラルーシ。朝日の記事にはセルビアの名前が上がっていて、日経の紙面にはポーランドも少し危険という観測が出ている。パキスタンは米国との関係が急速に冷却していて、今度の債務不履行の危機に際しても、真っ先に中国に援助を要請したと日経の報道(本日1面)にあった。デフォルトで問題になる国が、米国のグローバル支配の経緯と無関係でない点が気になる。連鎖する新興国破綻現象は、世界政治のバランスにおいては、米欧の勢力後退と露中の勢力拡大に直結するだろう。

テニスコートの誓いとポストIMF - 新大統領とG20サミットの情勢_b0090336_1294119.jpgもう一つは、オバマ新大統領誕生と同時に攻勢が予想されるアフガンとイラクの反米反政府勢力の動向である。両地域の反米武装勢力にとって、当然、新大統領はマケインではなくオバマの方が都合がいい。だから、大統領選挙の前は積極的な武力行動を差し控えていたはずだ。現地で派手に武力闘争を激化させて、例えば自爆テロで米軍に大量の犠牲者を出したりすると、米国民の感情を刺激して世論が右傾化し、選挙で戦争継続派の共和党のマケインが有利になる。8月にグルジアで紛争が起きただけで、米国のマスコミが騒ぎ、武断派のマケインが宥和派のオバマを支持率で逆転する世論状況が現出した。だが、大統領選挙が終われば、今度は満を持してオバマを揺さぶるために戦闘を激化させる。米国の世論を米軍撤退へと導くべく米兵のボディカウントを増やす作戦に出る。当然だ。本音では撤退を腹に決めているオバマは、選挙前はそれを口にできないが、現地の武装勢力が戦闘を激化させれば、米国民に撤退を説得する環境が整う。大統領選の序盤、今年の1月時点では、オバマの方針は最も左寄りの即時撤退論だった。それが、予備選の途中から徐々に曖昧になり、右にスタンスを寄せて行き、左側から裏切りを責められていた。

テニスコートの誓いとポストIMF - 新大統領とG20サミットの情勢_b0090336_1295137.jpgイラクからは(即時ではなく)暫時撤退して、戦力をアフガンに集中させ、パキスタン国境山岳地帯のタリバン・アルカイダ勢力を叩き潰す。この作戦方針は、民主党の大統領候補筆頭と目されていたヒラリーが昨年から提唱していたもので、民主党のメインストリームであり、オバマも予備選の途中からこの路線に追随する。だが、アフガンの状況もこの1年間で大きく変わった。ムシャラフの失脚によってパキスタン情勢が一転し、現在では、マリキ政権の倒壊よりもカルザイ政権の倒壊の方が早いと誰もが予測を立てている。カルザイと米軍は民衆の支持を失い、首都は刻一刻と反米勢力に包囲されつつある。カブール陥落の時は近い。おそらく、オバマ政権発足直後に一斉蜂起があるだろう。その情勢を用意するのは、ドルの下落とポストIMFの新興国の動きであり、米国内での軍縮厭戦世論の高まりである。新大統領は、「新ニューディール政策」の大型の財政出動のためにも、軍事費を削減して財源を捻出しなくてはならず、軍縮と撤退を国民に説得しなくてはならない。来年は、米国の財政問題が焦点になり、それに絡んでアフガンとイラクの情勢が風雲急を告げるだろう。ドル支配体制(IMF体制)の崩壊は、アジアにおける米国の覇権喪失とパラレルに展開する。イラクとアフガンの民衆は息を潜めて機を待っている。

こうして展望すると、11月4日から11月15日の情勢は重要な意味を持つ。鍵を握っているのは、やはり中国だ。

テニスコートの誓いとポストIMF - 新大統領とG20サミットの情勢_b0090336_1210775.jpg

by thessalonike5 | 2008-10-29 23:30 | 世界金融危機
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