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本と映画と政治の批評
by thessalonike5


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選挙戦前に起きた四つの政策の変化 - 民主党の「政策」の真実
選挙戦前に起きた四つの政策の変化 - 民主党の「政策」の真実_b0090336_17254287.jpg起死回生を狙った総裁選が尻すぼみに終わり、初期の演出効果が急速に減価償却され、自民党の状況不利が次第に明らかになっている。自民党は麻生太郎を中心にした売出し作戦を懸命にやったが、政策論争は腰折れで熱を帯びず、メッセージは曖昧なまま自民党の宣伝にもならず、3年前や2年前のようなマスコミの翼賛を獲得することにも失敗した。地方での演説集会には動員しても人が集まらず、党員の関心が低く、党員党友の投票率は低調だったと言われている。総裁選は自民党に、小泉改革による打撃と被害が地方においてどれだけ深刻で、地方の経済と住民生活が絶望的な状態に陥っているかをまざまざと見せつけたに違いない。改革派の2人の候補者からは、「小泉改革の継続」の言葉は徐々に音量が小さくなって行った。上げ潮と財政出動と緊縮財政の政策論争で世論を盛り上げようとした自民党の目論見は、国民生活の実情の前に前提を失われ、それらが票にならない永田町の空論だということが露わになった。



選挙戦前に起きた四つの政策の変化 - 民主党の「政策」の真実_b0090336_1726844.jpgテレビの報道で伝わってくるのは、国民は、何より年金問題になお強い関心を持っていて、決して年金から目を離してはいないということであり、そして後期高齢者医療制度にも激しい拒絶感を持ち続けていることである。政党やマスコミがどのような争点設定をしようとも、有権者にとっての関心と争点は年金問題と後期高齢者医療制度である。一票入れるときは、マスコミの世論誘導に影響されることなく、年金と高齢者医療での判断基準で投票をする。1年前、舛添要一は保守のマジョリティから多少の支持があり、福田政権は無能でも舛添要一が厚生官僚を叱咤督励して年金問題の処理に格好をつけるのではないかと期待する向きが若干あった。読売系の日本テレビが舛添要一を粉飾して支援していたが、実際に舛添要一のやったことは徹底的な官僚擁護で、国民を詭弁で騙して何か「前向き」にやっているような演技でゴマカすことだった。結局のところ、舛添要一は年金問題解決の日程さえ言わず、問題を闇に葬り去って頬かむりする意図が明白になった。

選挙戦前に起きた四つの政策の変化 - 民主党の「政策」の真実_b0090336_17261913.jpg詭弁とはぐらかしとその場凌ぎの出鱈目な演技が見抜かれ、舛添要一に対する国民多数の不信は決定的となり、保守のマスコミも舛添要一を庇護できなくなった。舛添人気も麻生人気も所詮はマスコミが勝手に作り上げた虚像であり、鍍金が剥げ落ちて正体が見え始めている。9月1日から始まった長い選挙戦の序盤、すなわち自民党総裁選の期間中、現時点では政治家の言葉の表面だけではあるけれども、国の政策は大きく変容した。国民の世論が政策に反映されている。まず第一に、9月以前はバラマキと言われ、無益で不毛な人気取りの浪費政策のように言われていた中小零細企業へ景気対策について、次第にマスコミがバラマキという表現を慎むようになった。バラマキ政策を口にしない政治家が自民党にも民主党にも皆無だからである。昨夜(9/22)の報道ステーションの星浩の発言を見ても、朝日新聞は財政出動や子育て支援に批判的で、依然として新自由主義の「小さな政府」路線に固執し、バラマキ問題を選挙の争点にして、民主党に「小さな政府」路線への回帰を求めている。

選挙戦前に起きた四つの政策の変化 - 民主党の「政策」の真実_b0090336_17263114.jpgだが、この朝日新聞の主張を支持する国民はなく、朝日新聞自身が、自分たちがどれほど時代遅れの新自由主義者で国民から浮いた官僚の代弁者かを自覚しなければならないのだが、星浩にはそうした様子は微塵もなく、テレビで何か言えば視聴者は朝日新聞の言説を選挙の争点にするものだと錯覚している。第二に、それと関連して消費税論議が選挙から遠のき、官僚や新自由主義者が意図した選挙の争点化は潰え、この選挙では論議すら見送られる状況に変わった。麻生太郎自身が3年間の消費税論議封印を言い始めたからである。官僚と経団連にとっては不本意きわまりない現実だが、地方遊説に回った自民党の選挙部隊が地方の世論を肌身で感じた挙句の判断であり、選挙に惨敗したくなければ消費税は棚上げせざるを得ない。第三に、消費税問題と関連して、官僚の思惑とは180度逆の展開となり、特別会計と埋蔵金の問題が争点に浮上した。官僚と経団連は、社会保障財源がないから消費税増税をという戦略で選挙を行おうとしたが、財源論の方向が逆流して自分たちに襲いかかってきた。

選挙戦前に起きた四つの政策の変化 - 民主党の「政策」の真実_b0090336_1738579.jpg特別会計の問題は今度の選挙の大きな争点となる。この問題は昨年の参院選でも田中康夫が少し触れ、特別会計に数十兆円の余剰が隠匿されていて、財政赤字は国民を欺く官僚のデマだと指摘していたが、いよいよ特別会計の問題が論戦の俎上に乗り、官僚の嘘と財政赤字の真実が明らかにされる。消費税ではなく特別会計が争点になった。収奪者が収奪される。この問題は稿を別にして詳細に検討したいが、今度の選挙戦では神野直彦と金子勝がマスコミに出る機会が増えるだろう。特別会計の迷宮と魑魅魍魎を財政学で解説しなくてはならない。過去の莫大な財政出動にかかわらず日本経済が景気回復しなかった理由、国民負担率が高い割に日本の社会保障(セーフティネット)が未整備なままの理由、それは官僚が国家予算を有効に使わず、自分たちの私利私欲のために食い潰してきたからだ。霞ヶ関の官僚機構が近代国家の機能的で合理的な官僚制ではなく、国家経営に無責任な平安時代の官(古代貴族官僚制)に本卦還りして、民を一方的に収奪し疲弊させているからだ。その真実が論戦で明らかになればいい。

選挙戦前に起きた四つの政策の変化 - 民主党の「政策」の真実_b0090336_17265086.jpg第四に、社会保障予算2200億円の削減が事実上撤回の扱いとなり、後期高齢者医療制度も抜本見直しの方向になっている。小泉構造改革の諸政策が否定され、選挙後の政権では確実に方針転換が果たされる。竹中平蔵の政策の代名詞である「骨太の方針」も全面的な修正あるいは無効化が確実で、民主党の連立政権が誕生した場合には、毎年定例の「骨太の方針」の政府作業そのものが廃絶される可能性すらある。「骨太の方針」の中身を指図してきた米金融資本が東京から姿を消している。モルガン・スタンレーのフェルドマンは果たして来年も東京に居残っているだろうか。仮に自公が過半数を制したとしても、参院は民主党が押えていて、再来年の夏には次の参院選挙が控えている。社会保障費削減の維持は困難で、どちらが政権を取っても、政策は特別会計の余剰金を社会保障に回すという結論以外にない。以上、第一から第四まで政策の変化を並べたが、この変化が選挙の序盤戦で起きていて、すでに後戻りできない与件として政党のマニフェストを拘束している。いま日本の政治は新自由主義から離陸しようとしている。

選挙戦前に起きた四つの政策の変化 - 民主党の「政策」の真実_b0090336_1727028.jpgさて、政権獲得を目指す民主党だが、報道から感じるところを率直に言えば、国民は小沢一郎を積極的に信用していない。小沢一郎が言う「国民の生活」や「セーフティネット」の言葉は昨年の参院選と同じだが、国民の視線は冷ややかで、小沢一郎への期待度は昨年と較べてはるかに低いように見える。国民は大連立騒動で裏切られた衝撃を忘れていない。あれから1年も経ってないのだ。福田首相は政権を放り投げたが、小沢一郎も野党の党首の座を一度は投げ出して、国民を失望させる愚劣なヒキコ騒動を演じている。「最後の戦い」という言葉も聞き飽きて新鮮味がない。すっかり減価償却された感がある。小沢一郎の政策構想に酔い痴れているのは小沢信者の低能なブログ左翼だけだ。小沢一郎が言う200-300基礎自治体への再編成は、すなわち都道府県制の廃止であり、実際には新自由主義者の道州制移行論と結びつくものである。道州制を国内で最も早く言い出した小沢一郎の宿年の持論であり、地方切り捨ての最たる政策と言えるものだが、個人崇拝のブログ左翼はそれを知ってか知らずか、小沢一郎の都道府県潰し策を絶賛して崇め奉っている。

選挙戦前に起きた四つの政策の変化 - 民主党の「政策」の真実_b0090336_17271078.jpg1年前、「国民の生活が第一」、「政権交代」と言いつつ、六本木の高級中華料理屋で夜な夜な渡辺恒雄と密会して箸を動かしていたのは誰だったのか。その話が報道で暴露されたとき、小沢信者のブログ左翼以外は全国民が唖然としたが、1年前の前科があり、その前科に反省も何もしていない以上、同じ事が二度あっても決して不思議ではなく、今でも本当は裏で何をしているか分からない。自民党と民主党の両方が過半数に届かず、共産党を除く他野党と数合わせしても過半数に達しない場合、民主党は公明党か自民党と連立して政権を組まざるを得ない。公明党と組まないのなら自民党と組む手しかないではないか。しかも、自民党は公明党よりも民主党に基本政策が近く、政策が近い者同士が組むのが自然だと言うのなら、連立の相手は公明党ではなく自民党だという選択も自然である。ブログ左翼の「政権交代」プロパガンダの連呼には政策の観点がなく、政策の中身を吟味する思考が欠落している。そのとき紙の上に都合よく書かれた「政策」のスローガンが政策ではない。それを政策だと真面目に信じ込むから、国民は選挙の度に政党に騙されるのではないか。

選挙戦前に起きた四つの政策の変化 - 民主党の「政策」の真実_b0090336_17272077.jpg9月14日の「サンデープロジェクト」に出演した鳩山由紀夫が、聞き逃せない面白い発言をしていた。マニフェストをすぐに提示せずに9月末にまで遅らせるのは、先に出すと自民党がそれをパクるからだと言うのである。この種の話はよく聞く。そしてこの話は、日本の二大政党制なるものが本質的にはどのような性格のものであり、選挙のマニフェストというものがどのような実体のものかをわれわれに教えている。民主党がマニフェストで掲げた「政策」は、簡単に自民党が自分のマニフェストでパクれるものなのだ。つまり、両党は基本政策で差異がなく、どちらが政権に就いても同じ政治をする政党だから、互いにマニフェストの「政策」をパクりっこできるのであり、相手の「政策」を自分のものにできるのである。二党は理念と政策が同じ互換政党である。これが第一。もう一つは、マニフェストで示される「政策」が、パクったりパクられたりするだけの選挙期間中の単なるキャッチコピーであり、そのとき選挙民の耳に心地よく響き、一票を差し出させるための宣伝文句に過ぎないという真実だ。その「政策」は政策ではない。政策のように偽装した政治言葉だ。営業のセールストークであり、瞬間的な看板標語である。

選挙戦前に起きた四つの政策の変化 - 民主党の「政策」の真実_b0090336_17273159.jpgブログの読者に注意を促したいが、自分の選挙区の民主党候補の顔をよく見て欲しい。いずこも事情は同じだと思うが、私の選挙区の民主党候補も新自由主義系の若僧である。経歴と顔つきがいかにも絵に描いたような改革派の小僧で、世の中を舐めきった顔があの棚橋泰文を彷彿とさせる。前回、3年前の総選挙で、私はブログで選挙区での民主党への投票を呼びかけ、自分も不本意ながらそのように行動した。死票が確実の情勢で新自由主義者の若僧に一票を入れた。思い出しても不愉快だが、一票でも「改革ファシズム」を止めるべく、読者に呼びかけたことは自らも違わず実践した。しかし、今回は新自由主義の若僧に一票は入れない。選挙区で共産党が候補を立てない場合は棄権する。自民党にアゲンストの風が吹き、そしてどちらが勝っても新自由主義敗北の選挙になるのなら、私が民主党の新自由主義者のために貢献する必要はあるまい。ブログの読者は、各自の選挙区の民主党候補の素性を注意して確認していただきたい。後期高齢者医療制度の問題が起きたとき、民主党は国会でそれを取り上げず、厚生官僚を参院に証人喚問しようともせず、暫定税率で審議拒否を続けて貴重な時間を潰すだけだった。

国民はそれを忘れてはいないだろう。民主党の1年間の国会行動は、昨年の参院選の公約(医療対策、格差是正)を完全に裏切っている。それは選挙の前に絵に描いた「政策」であり、キャッチコピーに過ぎなかったのだ。民主党はマニフェストの「7つの提言」の第一に「格差を正す」と挙げたが、選挙後の国会では格差是正や派遣労働の問題解決のために何もしなかった。

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by thessalonike5 | 2008-09-23 23:30 | 政局
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