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本と映画と政治の批評
by thessalonike5


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リーマン・ブラザーズの破綻とその影響 - 竹中安心理論の崩壊
リーマン・ブラザーズの破綻とその影響 - 竹中安心理論の崩壊_b0090336_8254845.jpg結論から言って、田中宇が論じているとおり、米当局がリーマン・ブラザーズに公的資金を注入して救済する選択をしなかったことは、明らかに失敗であり、自滅行為であると断ぜざるを得ない。グリーンスパンのモラルハザード論は昨日のテレビ報道でも紹介されたし、今回の件も、理由は不明だが、現議長のバーナンキではなく前議長のグリーンスパンの判断が米国の意思決定に採択された可能性が高いが、これまでの金融危機を一気に金融恐慌のレベルに高める誤った舵取りが行われ、影響は米国だけでなく世界に広がってパニックに拍車がかかるだろう。グリーンスパンとポールソンは膿を出す手術を行ったつもりだろうが、私から見て、これは大動脈の血管にメスが触れた感が否めない。昨日(9/15)のNYSEは終値で終値で504ドル下げて大暴落している。東証も続いて世界同時株安が連鎖する。グリーンスパン自身が、さらに次の大手金融の破綻を予告するような発言をしていて、AIGやシティの株が売られることは間違いない。



リーマン・ブラザーズの破綻とその影響 - 竹中安心理論の崩壊_b0090336_826091.jpg昨夜の日本のニュース番組では、野村證券のチーフアナリストの木内登英が出てきて、竹中平蔵と同じような安心理論を言い、米当局が予め破綻しそうな証券会社には公的救済する施策を通告しているから、市場の混乱は拡大しないだろうと楽観論を垂れていた。業界4位のリーマンを救済しなかった当局が、次の破綻先を前もって確実に救済するという保証がどこにあるのか。リーマン・ブラザーズの破綻は、ベア・スターンズの救済処置の前例を考えれば、NY本社の従業員も言っていたとおり晴天の霹靂の事態だ。客観的なエコノミクスの認識と判断が必要な報道番組の解説に、こういう現実に市場で商売しながら業界の利害得失の中で生きている株屋が出てきて、その発言が果たして正確な分析や予測になるのか、私には大いに疑わしく思われる。木内登英は、今後、株式市場から資金が商品市場に逃げて、原油高が一段と進み、日本経済に打撃を与えるだろうと言っていた。新自由主義者のいつものご託宣だ。だから改革を加速せよという話に落ちる。

リーマン・ブラザーズの破綻とその影響 - 竹中安心理論の崩壊_b0090336_8261271.jpgしかし、木内登英の予想とは正反対に、昨日のNYMEXは5ドルも下げて1バレル95ドルの終値をつけている。全く逆であり、前にブログで述べたとおり、この事実は信用収縮でしか説明できない。当局がどれほどマネーサプライを増やしても、信用収縮が激しくて、不良債権の増加の速度に追いつかないのであり、加えて、連邦議会で原油市場の投機規制の動きが明確になり、ヘッジファンドによる投機マネーの暴走に歯止めがかかった効果が出てきた。1992年の日本の土地バブル崩壊と同じ道理であり、大蔵省が総量規制に踏み切った時点で、需要は無限であるはずの土地の価格は下落に転じた。今回、米国の国民の心理的動揺は限りなく大きなものがある。消費心理は凍え、投資意欲も萎縮し、実体経済への影響は甚大で予測もつかない。米国での証券産業の地位は、日本で言えば自動車産業やエレクトロニクス産業のそれに匹敵する。世界中の富を米国に集めてきて、米国経済に繁栄を齎す花形産業であり、まさに基軸産業である。喩えるなら、日立製作所やホンダが倒産したのと等しい。

リーマン・ブラザーズの破綻とその影響 - 竹中安心理論の崩壊_b0090336_8262361.jpg今回の破綻が及ぼす影響について、三つの観点から以下に述べたい。第一に東証への影響、第二に証券の無価値化の問題、第三にドル危機の問題である。まず第一の東証への影響だが、これはきわめて深刻で、リーマンは2007年度の国内での売買代金総額が106兆円の最大手であり、東証の売買シェアのトップ企業である。この最大手のプレイヤーが市場から退場する。東証の売買金額が減るのは当然で、株価は間違いなく下落する。昨夜、金融庁はリーマンに12日間の業務停止命令を出した。これは、保有している株式や債券を市場で売らないようにという措置である。株式の一斉売却による混乱を避けるためで、リーマン日本法人の保有資産を精査して、市場への打撃がミニマムになるように、どこか穏便に引受先を探すのだろう。リーマンの場合、破産法申請であり、吸収合併ではない。日本で言えば、民事再生法の適用で、すなわち管財人が出てきて債権者会議を開き、資産と負債を整理処分する手続が執行される。会社は解散、事業は閉鎖で、全資産は放出売却され、リーマンの持ち株は一気に売られる。リーマンの保有が多かった企業の株が暴落する。

リーマン・ブラザーズの破綻とその影響 - 竹中安心理論の崩壊_b0090336_11293262.jpg第二に、田中宇も指摘しているとおり、リーマンが発行した債券の紙屑化の問題がある。本日(9/16)、リーマンの日本法人は民事再生法の適用を申請して、負債総額は3兆4000億円と発表された。リーマンは、外資系金融の中で最も莫大な売買代金を東証で計上している巨人であり、特に日本市場での事業規模が大きい。日本に多くの機関投資家の得意先を持っていたということであり、日本企業に食い込んで、自社発行債券や担保債券を売りまくっていたことになる。報道では、あおぞら銀行(約486億円)やみずほ銀行(約400億円)などの金融機関の名前が大口債権の保有者として上がっているが、問題なのは、金融機関以上にメーカーなどの日本企業が直接間接に保有しているリーマン発行債券である。前に『投機マネーは誰によって生み出されるのか』の記事で書いたが、改革政治が続いた5年間、日本の大企業は空前の利益を上げ、それを内部留保として自己資本に繰り入れ、M&A対策資金として資本防衛と資本攻勢の資金にする新自由主義の経営にどっぷり浸った。労賃は切り下げ、設備投資や開発投資も怠け、政府には法人税を削らせ、ひたすら金儲けに走って内部留保を溜め込んだ。

リーマン・ブラザーズの破綻とその影響 - 竹中安心理論の崩壊_b0090336_11294532.jpgその内部留保の自己資本は、銀行の定期預金になっているのではない。ゼロ金利の円で回る債券で運用するバカな経営者はいない。外債で運用するのだ。ドルかユーロ、主にドルであり、米資の金融会社が自ら発行した金融商品(コマーシャル・ペーパー)に替えて、投資商品を複数に分けてリスクを分散させながら高い金利で運用しているのである。企業の経理部の金庫には金融商品の証書が保管されている。これらのコマーシャル・ペーパーは、言うまでもなく元本保証などなく、元は額面ゼロの只の紙切れであり、取引の中で値がつき、格付会社に格付が与えられて値が上がり、レバレッジの原理で価値が膨らむものである。そういう金融商品を日本の企業が大量に抱えている。小泉改革の5年間、総額でどれほど膨大な利益を大企業が上げたのか。その金がドルになり米資のマネーとなり、産油国のオイルマネーから還流する分と並んで、彼らの信用膨張の基礎を提供していた。経理部の金庫に保管された証書が本当の紙屑になる。売りたくても売れなくなる。不良債権になる。日本企業は金融資産運用で損失を出し、自己資本を大きく毀損する事態に陥るだろう。日本の金融機関がリーマンに米国で運用させていた金融商品もある。

リーマン・ブラザーズの破綻とその影響 - 竹中安心理論の崩壊_b0090336_1325455.jpg第三に、ドル危機の問題だが、米国債や米証券で資金を運用している外国の企業や投資家は、これから一斉に資金を引き上げる動きに出るだろう。そうしなければ、放っておけば債券は紙屑になる恐れがあるし、そうでなくても日が経つほどにドルが下がって価値が失われて行く。現在、1ドル104円の相場だが、今週中に間違いなく1ドル100円の線を突破するだろう。私は年初に1ドル80円を予想していて、榊原英資も正月の番組でほぼ同じ予想を披露していた。危機は信用不安から金融恐慌へと流れつつあり、レバレッジ金融の断末魔と共にドルが国際基軸通貨の地位を失う将来が見えてきた。レバレッジとデリバティブの金融テクノロジを駆使することによって、80年代までに製造業での国際競争力を失った米国経済が、金融とITで世界のカネを巻き集めることに成功し、それを元手に米国内の消費を引き上げ、経済成長を維持してドルの地位を安定させてきたのである。レバレッジ金融の基軸が折れたら、米国の金融メカニズム(影の銀行シシステム)は麻痺し、膨張したマネーは急速に収縮し、資金不足になり、国際金融の支配力を失い、ドルの国際決済通貨としての地位も失われる。そもそも日本の貿易相手国の第1位は、すでに米国ではなく中国なのである。

リーマン・ブラザーズの破綻とその影響 - 竹中安心理論の崩壊_b0090336_13251663.jpg米国が国際金融の支配力を失う現象形態は、これから1年間の間に東京から逃げ出すハゲタカの数で確認することができるだろう。リーマンは事業閉鎖で撤退が決まった。従業員1400人は解雇される。AIGも間もなく破綻して撤退となる。アリコやアメリカン・ホーム・ダイレクトに影響が出る。メリル・リンチはバンカメに吸収合併され、海外部門の大幅な縮小整理を余儀なくされる。残ったゴールドマンとモルガンがリーマンとメリルの顧客と売上をカバーするかと言うと、決してそんなことはなくて、米国内で損失を出したヘッジファンドのサブプライム事業の穴埋めのために、東証の株を売り、日本の土地不動産を売り、高くなった円を安くなったドルに交換して本社の財務に充てる判断になるだろう。ハゲタカは傷ついて、羽から血を流しながら太平洋を東へ飛んで行く。アジア・パシフィック地域から撤退する。円高ドル安になるということは、住居費や光熱費や人件費などの経費が高くなるのである。金融危機はドルの信用を衰えさせ、世界のカネが米国に集まるシステムが機能しなくなる。世界のカネを米国に集めていた集金装置(投資会社)が消える。世界の金融は多極化の現実に直面し、新しい国際金融秩序を模索する動きを始めざるを得ない。できれば世界大戦という経験則上の暴力的な媒介なしに。

リーマン・ブラザーズの破綻とその影響 - 竹中安心理論の崩壊_b0090336_8265434.jpg

by thessalonike5 | 2008-09-16 23:30 | 世界金融危機
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