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本と映画と政治の批評
by thessalonike5


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民主党代表選はなぜ無風なのか - 脅しと締めつけ、カネとポスト
民主党代表選はなぜ無風なのか - 脅しと締めつけ、カネとポスト_b0090336_2192366.jpg参院で3人(→2人)の民主党議員が会派を離脱して新党結成に動き、解散総選挙を前に政局が流動化する動きが始まった。この新党は平沼新党に合流すると見られていて、総選挙の票の流れや選挙後の国会の勢力構成に微妙な影響を及ぼす可能性がある。福田政権が保守層のマジョリティの支持を集めていない理由の一つが、中国や北朝鮮に対するハト派外交であり、この10年間に極端に右傾化の度を強めた右側の大衆の気分や常識では、福田外交は「左に寄り過ぎている」のであり、彼らにとって福田政権の1年間はストレスであり、総選挙を機に平沼赳夫的な右翼壮士的気分を政治に持ち込ませたい保守層が少なくない。姫井由美子の離党騒動について様々な憶測がされているが、私はカネが動機ではないかと見る。政治家が欲しいのはカネとポスト。カネとポストで政治家は動く。今回、民主党の代表選は無投票で小沢一郎が再選される情勢になっているが、奇怪で隠微な経緯を辿った民主党代表選の政治を読み解くキーワードもカネとポストである。



民主党代表選はなぜ無風なのか - 脅しと締めつけ、カネとポスト_b0090336_10545771.jpg政治評論家の屋山太郎は、政治番組「TVタックル」で、民主党代表選に小沢一郎の対抗馬が出て来ない状況について、次のように説明していた。「小沢のやり方は経世会だからな。強烈な脅しや締めつけをやるんだよ。睨まれたら選挙できなくなるし、党の中で生きていけなくなる」。実際のところ、現職議員に対しては選挙区を回れと口うるさく言い、東京を離れさせて地元に張り付かせ、代表選絡みの会合に出られなくしていたし、候補者調整の権限を奮って、「無投票再選」に少しでも異論を唱える者は公認を外すという構えで脅しをかけていた。公認差し替えの脅しは今でも続いていて、公認済候補たちが戦々恐々となっている様子が8/28の朝日の記事になっている。私は、6/18の記事で「誰も立たないときは岡田克也が立って政策論争の格好をつける」と予想を立てた。本人もそのつもりで動いていたらしく、本も出版し、文藝春秋9月号(8/9発売)に「小沢さんと私は違う」と題した寄稿をしていたが、結局、7月末に出馬を見送った。岡田克也はなぜ出馬を取りやめたのか。

民主党代表選はなぜ無風なのか - 脅しと締めつけ、カネとポスト_b0090336_10564452.jpg解説しよう。この男はカネで転ぶ人間ではない。買収はできない。では、どうやって降ろしたか。ポストである。今度の衆院選で勝利して政権を奪ったら、必ず君を総理大臣にする。そう約束したのだ。小沢一郎はすでに選挙に勝ったら自分が首相になると言っている。もし自分が首相にならずに岡田克也を就けたら、それは公約違反ではないかという話になるが、小沢一郎はそうやって何度も公約違反をやり、昨年の大連立も自分から仕掛けて動いた。どうやるか、からくりを教えよう。民主党が衆院選に勝利する。過半数を制して政権を奪る。小沢総理誕生と大騒ぎが始まる。そのとき、特別国会が召集される前に、首班指名を受ける前に、小沢一郎は選挙の過労がたたって体調を崩し、病院に入院してしまうのである。小沢一郎倒る。小沢一郎は心臓の持病を持っていて、何かあると病院に隠れる。仮病の疑いが濃厚な入院が屡々あった。鳩山由紀夫や菅直人ら幹部が病室に駆けつけて見舞う。そこで、ベッドの上で、岡田克也を指名するのである。「俺の代わりは岡田で頼む」。誰も拒絶できない。

民主党代表選はなぜ無風なのか - 脅しと締めつけ、カネとポスト_b0090336_1057229.jpgこれなら、万事うまく収まる。誰も文句を言えない。病気なら仕方ない。病人に総理大臣はやらせられない。小沢一郎はこの秘策を告げ、岡田克也を納得させ、岡田克也を代表選から降ろした。無論、小沢一郎は最初から首相などやる気はないのである。面倒くさいからやりたくない。四六時中マスコミに監視される身など真っ平だ。闇将軍こそが狙いであり、病室から電話で指示を出し、組閣人事は全て自分が決める。言うとおりにさせる。岡田克也はお飾りの人形に過ぎない。政治家はカネとポストだ。枝野幸男もポストで口説いて降ろした。枝野幸男の場合、むしろ最初から代表選に出馬することよりも、その動きを見せて、小沢一郎からポストをせしめることが目的だったような気配がある。枝野幸男がせしめたポストは何か。代表選後の新幹事長ではないかと私は予想する。枝野幸男が一番欲しいものがそれで、幹事長をくれるのなら代表選を降りてもいい。政調会長は一度やっている。枝野幸男にとって今後の最大のライバルは長妻昭である。長妻昭を蹴落として先に民主党代表にならなくてはならない。

民主党代表選はなぜ無風なのか - 脅しと締めつけ、カネとポスト_b0090336_10571869.jpg枝野幸男を幹事長に就けると、民主党も若返ったイメージができて、今度の選挙戦にも都合がいい。小沢一郎にとっても悪くない取引だっただろう。枝野幸男は、ライバルである長妻昭を要職に就けないように小沢一郎に頼んだはずで、長妻昭の政調会長は今回は見送りかも知れない。次は野田佳彦。野田佳彦はどうやって降ろしたか。野田佳彦にはポストは与えていない。取引もしていない。20人の推薦人が集まらなかったのである。すなわち、集まるべき推薦人を買収した可能性がある。産経新聞で記事になっているが、野田グループの有力幹部である松本剛明が野田佳彦の出馬に反対して足を引っ張っている。野田佳彦にとっては意外だっただろう。野田佳彦も、まさか20人の自派閥を率いながら、派内で揉めて推薦人が足らない事態になるとは想定外だったに違いない。恐らく、松本剛明がカネで切り崩されている。前原誠司もカネを積んでもらって、ありがたく辞退したものだろう。屋山太郎の評論に戻ると、小沢一郎の手法は経世会だと言う。経世会の手法とはアメとムチであり、ムチは屋山太郎が言っている「脅しと締めつけ」である。

民主党代表選はなぜ無風なのか - 脅しと締めつけ、カネとポスト_b0090336_10573665.jpgだが、ムチだけでなくアメがある。アメはカネとポストだ。経世会の多数派工作、党内選挙工作の何たるかを教える教科書的な政治の事例があり、それは1972年に田中角栄が福田赳夫を破った自民党総裁選である。事前の予想は福田赳夫の優勢だったが、田中角栄が実弾を大量にばら撒き、中間派を悉く買収して勝利を収めた。経世会にとって買収工作はオヤジが教え伝えた神聖で正統な政治技術であり、それの修得や駆使に何の倫理的支障も生じることはない。カネは政治権力の手段なのであり、買収は神であるオヤジの祖法なのだ。民主党は7/4に結党10周年のパーティを都内で開催して、総勢5000名の来場者を集めている。資金収入は総額でどれほど得たのか。その資金を何に使ったのか。パーティは小沢一郎のための代表選の工作資金作りが目的だったのではないかというのが私の見方だが、この見方は間違っているだろうか。実際のところ、岡田克也や枝野幸男が立てば代表選はどうなったか分からないし、誰か一人立てば、小沢一郎の締めつけ手法に対する批判が燎原の炎のように広がった可能性がある。民主党の体質というのは本来が百家争鳴的だ。

民主党代表選はなぜ無風なのか - 脅しと締めつけ、カネとポスト_b0090336_17112571.jpgさて、最後に小沢信者のブログ左翼の詭弁を論破しよう。最近のブログ左翼主流派の議論は、ほとんどカルト集団のように新興宗教化していて、自由な政治的言論の性格を失っている。まず、総選挙があるから、代表選で論戦をやると党の結束に悪影響を及ぼすだとか、総選挙を前に党内で政策論争をやっている余裕などないという主張だが、単なるこじつけであり、何の根拠もなく説得力もない。民主党の代表選は2年に一度ある。国政選挙もほぼ2年に一度のペースでやってくる。再来年には参院選がある。選挙があるから党の代表選ができないなどと言って避けていたら、いつになっても代表選などできないではないか。これこそ全く嘘の理由づけだ。一昨年の自民党総裁選を想起しよう。ポスト小泉をめぐって3人が立候補し、マスコミを動員した大規模な宣伝が行われ、3人は各自が政策の立場を変えて論戦を展開したが、自民党の結束が壊れるなどということはなく、宣伝は成功して自民党の支持率は上がり、総裁選後の安倍内閣の支持率もハネ上がった。あの総裁選こそ、1年後にある参院選を睨んで、自民党と安倍政権の好感度を高めるための情報戦略だった。代表選は党をプロモーションする場である。

最近のブログ左翼の狂信的な小沢崇拝は異常であり、明らかな個人崇拝の様相を呈している。

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【世に倦む日日の百曲巡礼】

今日の一曲は、Eric Clapton and B.B. King『Riding With The King』 を。

解説なし。(笑) この二人が一緒に演奏している映像がこれほど多くあるとは思わなかった。YouTubeのありがたいところ。無料で何度でもパーソナルに楽しめるわけで。音楽を愛する人間は、国境を越えて同じということだろうか。それでは、ブルースを聞きながらよい週末を。


結局、最初の「自民党政治を終わらせる」というオブジェクティブのスペシフィケーションに問題があったと言える。

それは、そのまま「民主党に政権交代させる」「民主党の政権交代を応援する」というシンプルな政治目標にスライドしてしまう。新自由主義の政策を転換させて福祉国家を実現するという意味や内実は消え、憲法を守るとか、対米従属の国家方針を変えるとかの具体的目標性もなくなる。政治的理念や政策の中身の問題ではなくなり、選挙結果での政権交代のイベントが目標になる。

ブログ左翼主流派は(政策ではなく)イベントを目標にしていて、イベントの達成を運動の成果として誇示することが目標で、それを世間にアピールする狙いを持っているのだろう。

スペシフィケーションの経緯を辿ると、なぜ「政権交代」が目標に設定され、民主党応援団になってしまったかの秘密があり、スペシフィケーションに関与した人間が極端な「反日共」主義者で、「反日共」ネット政治運動に生涯をかけていたような気配があり、共産党系排除の目論見で意図的に運動を民主党に寄せ、結果的に政策ではなくイベントを目標化した運動標語を掲げたことがある。

それをイベント主義者が「ちゃっかりといただいた」というのが真相ではないか。それにしても、「普通の国」を掲げて、改憲派のリーダーとしてここ20年間の日本の政治をかき回した保守の二世政治家を、「左派」の人間が個人崇拝して、毎日プロパガンダをスピーカーし、党員以上に熱狂的に奉仕している図というのも、私には異常で奇怪としか映らないし、全く理解できない倒錯した政治的情景である。

by thessalonike5 | 2008-08-29 23:30 | 政局
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