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本と映画と政治の批評
by thessalonike5


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キーワードとしてのレバレッジ - 金子勝の論文と田中宇の記事
キーワードとしてのレバレッジ - 金子勝の論文と田中宇の記事_b0090336_17464.jpg世界経済のニュースへの関心が高まっていて、注目点は大きく二つある。一つは現在の原油価格の高騰が今後も続くのか、それとも間もなく暴落するのかという問題であり、もう一つは米国の金融危機がどうなるのか、1929年の世界恐慌の事態が再現するのかという問題である。二つの問題は構造的に関連している。主に米国からニュースが発信されるこの問題は、われわれの生活と将来に直結する問題であり、一刻も目を離すことのできない焦眉の問題だが、ニュースの中に国際金融の専門用語が含まれて説明される難解な事象であり、容易に理解を得られない悩ましさがある。この問題について概念的な了解を得る必要がある。ぼやけた視界が眼鏡をかけることで対象を明確に捉えられるように、自分自身の中に精度のよい眼鏡を装着しないといけない。それは経済学的な知見というものだろう。それを各自の知性が準備しないと、何が起きても、原油が高騰しても、株価が下落しても、福田が悪い、自公が悪い、ユダヤが悪いと、そればかりを暑苦しく騒ぎ続けるBLOGと変わらなくなる。



キーワードとしてのレバレッジ - 金子勝の論文と田中宇の記事_b0090336_1741981.jpgテレビ朝日の報道ステーションが、この経済問題の関心に比較的よく適合した姿勢で米国経済の取材と報道を続けている。見ていると、間もなく米国で金融のクラッシュが起きる予感を取材スタッフが持っていることが伝わってくる。この一連のテレビ情報を追いかけるだけでも、何も見ないよりは問題の整理と把握に近づくことができるはずだ。だが、それを追いかけて、それでは自分の文章や発言で何が起きているかを表現できるかとなると、途端に何も説明すべき言葉を組み立てられないのであり、ただ危機感や焦燥感が口から出てくるだけだ。何が起きているか、自分の頭で構図を描けないといけない。ネット上のリソースで参考になるものとして田中宇の記事がある。特に、7/87/12の日付の二つの記事は米国金融の破綻にフォーカスしたもので、例によって入念に情報が目配りされ、興味深く説得力ある分析が提供されている。読んでわかるとおり、二つの記事のキーワードはレバレッジであり、レバレッジ金融による信用膨張が終焉を迎え、米国型金融が崩壊するという予想が示されている。

キーワードとしてのレバレッジ - 金子勝の論文と田中宇の記事_b0090336_1742855.jpgこの田中宇の記事と全く同じ基調の経済論文が、金子勝とアンドリュー・デウィットの共著によって岩波の雑誌「世界」に掲載されている。『グローバル・クライシス』と題された論文は、7月号が第1回で、8月号にも第2回が掲載され、シリーズとして続く予定になっている。この『グローバル・クライシス』が面白い。論点が整理されてわかりやすく、エコノミクスらしく図表が豊富で、読者に問題把握のための概念を提供している。今まさにわれわれにとって必要な知見が経済学から届けられている。最新8月号は、米国の住宅担保債権のバブルのメカニズムに焦点が当てられて分析が試みられている。ボリュームとしてコンパクトであり、一般市民が知識として持つ内容として十分な中身がある。そして何より、現在のわれわれの関心にそのまま適合する議論になっている。「世界」の7月号と8月号を手元に置いて論文を読むことをお奨めしたい。私は、この連載が続く間は「世界」を購読しようと思っている。それだけ価値がある。恐らく、次回以降、原油市場の投機マネーが分析の対象となり、ドル危機とアジア経済のバブル崩壊も論点になるだろう。

キーワードとしてのレバレッジ - 金子勝の論文と田中宇の記事_b0090336_174433.jpg田中宇の記事も、少なからず金子勝の「世界」7月号論文に触発されているのではないか。さて、問題のレバレッジだが、この言葉が概念として頭に整理されていると、この最近の2回の田中宇の記事がスムーズに読み通せる。レバレッジとは、英語で「テコの作用」の意味で、購入証券を担保に資金を借入れ、その資金でさらに証券を買い増して、他人資本を使って自己資本の利益率を高めることである。この仕組を原理的にインプリメントした金融のビジネスモデルが、田中宇の記事の言うレバレッジ型金融である。われわれが大学で経済学を勉強していた当時は、こうした金融経済の実態は世界になく、それを理論的に捕捉説明する概念もなかった。1980年代以降の現象であり、新自由主義による金融の規制緩和に伴って生じた新しい資本の運動と循環の形態である。一見して、ネズミ講的な胡散臭い印象があり、根本的なリスクを内包したシステムであることが直感される。新自由主義経済の原理的特徴が、まさにレバレッジ金融のビジネスモデルにあり、このレバレッジ型金融の行き詰まりが、新自由主義の世界金融の頂点に立つ指導者の口から言われ始めた。

キーワードとしてのレバレッジ - 金子勝の論文と田中宇の記事_b0090336_1745288.jpg金子勝の論文では、5/12のジョージ・ソロスの言葉が紹介されていて、「数十年にわたる『スーパー・バブル』が崩壊しつつあり、危機の元凶は低コストの資金や膨大なレバレッジ、複雑で難解な金融商品など」だと言っている(7月号 P.73)。田中宇の記事では、英銀行協会の会長を務めるスティーブン・グリーンが、6/10の講演で「レバレッジを拡大すればするほど儲かる金融ビジネスのモデルは、破綻した。バブル崩壊という循環的な変化ではなく、ビジネスモデル自体の破綻である」と述べたことが紹介されている。他人資本を利用した自己資本の利益率増大の資本運動に対する懐疑と警告。つまり、新自由主義の根幹の原理の否定であり、レバレッジ以前の伝統的な金融ビジネスへの回帰、すなわち健全な資本主義のモデルの復活の要請である。これは金融と会計への規制によって実現できる。これまでグローバリズムの旗を振り、世界中の国の金融システムを投機マネーの荒稼ぎに都合のいい無規制の制度に変えてきた張本人たちが、新自由主義の原理的限界に直面して、それを言葉にし始めている。レバレッジがバブルの根源であり、バブルは必ず破裂するという認識が、世界のエコノミクスで一般化した。

キーワードとしてのレバレッジ - 金子勝の論文と田中宇の記事_b0090336_175142.jpgこの認識の一般化というのが実は意味がある。日本のバブル経済も、土地の総量規制が制度化してようやく破裂に至ったが、土地価格が上がり続けているときでも、それを容認する声は政界やマスコミに多かった。景気に水を差すとか不況になるからという理由で、自民党や財界に反対論が強く、さらに土地や株で俄かバブル長者になり、それを担保に銀行から借入をして、さらに株や不動産やゴルフ会員権を買い増ししていた連中の論理もそうだった。土地高騰で被害を受けた者たちや実体経済へのマイナスが意識され、一部のマスコミで批判的な特集が組まれて、ようやく政権が方向転換の政策判断をした。レバレッジやデリバティブの原理を金融の実務に即して辿ろうとすると、摩訶不思議な錬金術の世界に迷い込む感があり、資本主義の本質に触れる実感を抱く。それは、ルールの恣意性と隠蔽性という問題であり、強者による弱者の収奪と詐欺という問題である。金子勝の論文と田中宇の記事をさらに読み込む努力を続けたいが、3月のモノラインの危機に続いて、今度は住宅金融公社の破綻が注目され、530兆円という途方もない数字が飛び出てきた。米国の住宅の差し押さえ件数は減っておらず、逆に増加している。

様々な要素を考えると、中東戦争という可能性が決して低くないことが予感される。核戦争になるのではないかという気配も漂う。

キーワードとしてのレバレッジ - 金子勝の論文と田中宇の記事_b0090336_1751129.jpg

【世に倦む日日の百曲巡礼】

今日の一曲は、1968年の名曲で 青江三奈『伊勢佐木町ブルース』 を。

いいですよね、青江三奈。大好きですね、この人も、この曲も。あのころ、青江三奈とか奥村チヨが歌番組に出てくると、全国のお茶の間のお母さんが激しく怒り出して、テレビに向かってクレームを言っていたのでした。高度経済成長期の「夜の女」の象徴、アンチ戦後倫理のシンボル。

田舎の小学生の私は、厚化粧で髪を金髪に染めた青江三奈を見ながら、池袋ってどんなところだろう、キャバレーってこういう恐い女の人がいっぱいいるところかしらと、「池袋」や「キャバレー」に子供心の恐いもの見たさと言うか、恐る恐るの好奇心でイメージを膨らませていたのでした。


『恍惚のブルース』はあるけれど、『池袋の夜』 のYouTubeが無いですね。残念。

by thessalonike5 | 2008-07-17 23:30 | 世界金融危機
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