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石原発言の政治 - 東郷和彦の尖閣論と知識人の無言
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保坂正康と東郷和彦の共著で『日本の領土問題』という新書が出ている。あるとき丸善のオアゾ店で買い、特に書評に値する価値もないので一読したまま放っておいた。第3章に掲げられた章題が「武力衝突の危険をはらむ尖閣諸島問題」というもので、東郷和彦は、昨年、船長を即時釈放しなかった菅内閣の対応を厳しく批判、日中共同での尖閣諸島でのエネルギー資源開発を提案している。「私は、民主党政権が、たとえ無様な姿であっても船長の釈放という形で事態を旧に戻さなかったら、何度目かのステップには、かならず軍艦が出てくるだろうと思った。軍艦は、当初は威嚇のために出てくる。しかし、その威嚇が効果を持つためには、万一の場合は撃つということでなくてはならない」(P.140)とある。2年前の漁船衝突事件のとき、私も同じ展開を予想したし、菅直人も同じ判断をして、事態がエスカレートしたギリギリの段階でようやく船長を釈放した。東郷和彦は、これは民主党政権が日中外交に未熟だったために起きたものだと言い、自民党政権なら即釈放しただろうと言っているが、そんな指摘は誰も信用しないだろう。タカ派の自民党政権なら、逆に東郷和彦が予想したとおりの破局に至っていたはずだ。右翼系の産経文化人ではあるが、東郷和彦は尖閣問題での日中衝突を回避すべきという立場であり、外務官僚のメインストリームの立ち位置にある。
by thessalonike5
| 2012-04-20 23:30
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