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森永卓郎、中谷巌、野口悠紀雄の景気対策 - 給付金と政府紙幣
b0090336_12514986.jpg政府の再三の「追加経済対策」の連発が本格的な景気対策を企図したものではなく、政権の延命を目的にしたものであり、マスコミに撒く政局報道の材料でしかない点に現在の日本の経済政策の最大の問題がある。本来なら、野党である民主党がオバマ政権のような大型の景気対策をパッケージにして国民に提示すべきだが、民主党はそれを選挙まで出そうとせず、政策提案しないため、国内で積極的な論議が盛り上がらず、給付金叩きの不毛なワイドショー政治だけで経済政策の議論が終わっている。民主党が経済政策を出さないのは二つの理由があり、一つは選挙前にそれを出せば自民党のマニフェストにパクられて選挙戦の武器にならなくなるからであり、もう一つは財源論で自民党とマスコミに叩かれるのを嫌がっているためである。選挙の論理が政策を支配して、現在、日本では経済対策の議論が混迷した状況にある。以下、3人のエコノミストについて、それぞれどのような景気対策を提示しているか、特に給付金と政府紙幣の問題に注目して異同を整理してみたい。



b0090336_125233.jpg森永卓郎の経済政策論については、日経BPのサイトに記事があり、その中で分かりやすく説明されている。結論から言えば、定額給付金については政策それ自体に賛成で、ただ政府の給付金が小額すぎる点に問題があると言い、総額2兆円の規模ではカンフル材にならずと批判、その6倍の12兆円を特別会計から用意して、国民1人最低10万円の給付金を支給することを提案している。また、政府紙幣の発行についても賛成の立場で、GDP10%の総額50兆円を発行し、金融市場全体へのマネー供給を増やしてデフレ対策とせよと主張している。50兆円の使い道は、半分の25兆円を財政出動の原資として定額給付金に使えと言い、半分の25兆円で政府が市場から日本株を買い、株価対策にせよと提案している。政府紙幣のリスクについては、100年に一度の危機なのだからデメリットを危惧している余裕はないという論法で消極論を一蹴している。最近、給付金関連法案の国会成立が見えてきて、地方自治体でも支給に向けた事務手続の準備が進み、嘗てほど極端な給付金バッシングは影を潜めるようになった。

b0090336_12523238.jpg私は当初から定額給付金には賛成で、その論陣を張ってきたが、景気対策として最も有効な一手が定額給付金であるという確信は全く揺らがない。給付金に対する反対論の正体は、実は官僚がマスコミを使って扇動しているものである。この政策は公明党から選挙対策として出たもので、自民党から出たものではない。財務省や霞ヶ関は最初から給付金には否定的で、何故なら、給付金に回してしまうと自分たちの行政施策として官僚が使えるものにならず、「景気対策」を名目にした天下りや渡り用の特殊法人を新規に設立したり、自分たちの飲み食い遊興の「制度」や「費目」に予算づけできず、そのまま直接に国民の懐に入って消化されてしまうのを嫌がったのである。だからマスコミを使って給付金に対する猛攻撃を仕掛けた。野党は選挙対策と支持率対策の目的でそのキャンペーンに便乗し、給付金のバラマキは景気対策には効果がないとか、消費には回らず貯蓄に回るなどと口を揃えていた。霞ヶ関の連中の作戦は大成功で、給付金=バラマキのレッテルを貼ることに成功し、二度と給付金が政府施策として出ないように世論を固めた。

b0090336_12524471.jpg中谷巌の政策提案は、週刊エコノミストの2/3号に載っている。中谷巌の提案は独自のもので、「還付金付き消費税」という内容である。具体的には、消費税を現行の5%から20%に引き上げ、その代わりに年間所得1000万円以下の国民に対して、毎年40万円の給付金を支払うというものである。この政策を実行すると、例えば年間の消費が200万円の国民の消費税率は実質ゼロになる。消費税率20%で年間200万円を消費支出したときの消費税額は40万円だから、それが還付されることで消費税が免除になると説明する。年間消費が200万円以上の国民は消費税負担が重くなるわけだが、社会保障制度の財源ができるからよいではないかと中谷巌は言っている。この議論は、景気対策よりも社会保障制度の財源としての税源論に重きを置いた主張で、今の経済的現実の中で実際に採択されれば、景気をさらに冷やして不況を悪化させる効果にしか導かない。同じ論稿の中で、中谷巌は霞ヶ関の中央官庁を3分の1の規模に縮小せよとも言っている。一般受けする主張だが、こうした議論を聞くと、中谷巌の頭の中が依然として「構造改革」にあり、ケインズ的な景気刺激策に全く関心がないことがよく伝わってくる。

b0090336_12525894.jpg野口悠紀雄はどう言っているか。野口悠紀雄の最近の政策提案は文藝春秋3月号に小論として載っていて、具体的には、日銀引き受けで緊急に30兆円の国債を発行し、日本経済の有効需要の落ち込みに対処せよと言っている。この点は中谷巌に較べれば危機感があって、森永卓郎の議論に近いと言える。この30兆円の国債発行は無利子ではなく有利子だが、日銀が引き受けるという点が従来にない点で、「途方もなく常識はずれの提言だ」と本人も言っている(文藝春秋3月号 P.176)。悪性インフレを招く恐れのある日銀引き受けの国債発行は財政法で禁じられている。だが、財政法には国会議決があれば発行してもよいという例外条項があり、この規定を使って日銀引き受けの禁じ手を使えと言うのである。この小論では、特に政府紙幣についての論及はないが、政府紙幣を発行しなくても日銀引き受けの国債発行でよいというのが野口悠紀雄の判断と結論になるのだろう。現在、100年に一度の危機に対する経済対策の財源論として、(1)政府紙幣の発行、(2)無利子国債の発行、(3)日銀引き受け国債の発行の3者の立場がある。(1)と(2)は自民党内でも論議されていて、(1)-(3)に反対論を唱える側は、主な理由としてインフレの危険性を挙げている。

b0090336_12531367.jpgあらためて丹羽春喜の議論に立ち入って詳しく検討したいが、私は、現時点では、100年に一度の財政出動の原資として日銀引き受け国債を考えてもよいのではないかという印象を持っている。どちらにもインフレのリスクがあると言われている。だが、政府国債を中央銀行が引き受けて財政資金を工面する手法は、すでにブッシュ政権とFRBの間で行われている実績があり、その拡大がFRBのバランスシートに不安を生じさせ、ドルの信用崩壊の懸念を増す要因と言われつつも、現時点では米経済にインフレは起きていない。ドルとFRBだからインフレにならないのか、円と日銀ならインフレになるのか、その辺りの通貨と金融の事情と構造は分からないが、ひとまず米国の現状を見て、日本でも国債の日銀引き受けに歩を進めてみるべきと積極論を言う根拠にはなるだろう。丹羽春喜が言っている政府紙幣の発行権を日銀に売り、日銀が政府に代わって紙幣を発行するという手法は、おそらく、経済活動の主体である国民や企業から見れば、国債の日銀引き受けと何も変わらないのではないか。要するに有効需要のための財政資金が市場に投与供給されることを意味する。国債が必ず償還されなければならないように、政府紙幣も償還回収されなくてはならない。

b0090336_12532468.jpg野口悠紀雄は、こうして財源論としては「日銀引き受け国債」を提案するのだが、捻出した30兆円は都市インフラの整備に使えということで、耐用年数を過ぎた公的施設の建て替えに回せと言っている。ここが野口悠紀雄の発想の貧困なところで、有効需要創出のための財政出動の必要は認めながら、GDPのマイナスを埋める30兆円の使い道については何も建設的で説得的な提案がないのである。定額給付金については、貯蓄に回されるからという理由で明確に反対している。減税にも反対で、都市インフラ整備だけがアイディアだ。そんな予算をそんな用途で国交省に使わせたら、一体どのような悲惨な結末になるのか理解できているのだろうか。外環の内側と外側に新外環を回してそれで終わりだろう。さらに野口悠紀雄は、「真の構造改革が必要だ」と訴え、輸出立国モデルを崩して新しい産業構造へと転換しなくてはならないなどと言っている(P.178)。だが、新しい産業構造とは何かについては、「『それはわからない』と答えるほかない」などといい加減な弁で逃げている(P.178)。何も具体的な構造や設計はないが、構造改革はどうしても必要だと言い張るのである。まさに脱構築主義と新自由主義の癒着の思想的構図。経済学者として無責任きわまりない。何も肝心な政策論を言っていないのだ。わざわざ文藝春秋に小論を上げながら。

b0090336_12533784.jpg野口悠紀雄を評価する人間が多いが、私にはその理由が全く分からない。ほとんど何も考えていない経済学者に見える。最後に持論の繰り返しになるが、定額給付金が貯蓄に回って消費に回らないから経済効果がないという考え方は経済理論として間違いだ。貯蓄こそ消費の源泉であり、個人消費を媒介する根拠である。失われた国民の貯蓄を埋めなければ、不足と枯渇を埋めなければ、国民は消費にお金を回せない。貯蓄を充足させるためにこそ大型の定額給付金政策が発動されなくてはならず、給付金は消費以上に貯蓄の欠乏を埋める目的が措定される必要がある。だから、2兆円(1人1万2千円)で絶対的に足りず、20兆円(1人12万円)でも足りず、200兆円(1人120万円)の規模が必要なのである。長く資本と国家に収奪されてきた勤労者所得を、再度、勤労者の家計に移転再配分しなければ、一般の家計が購買力を取り戻すことはない。個人消費を伸ばすためには小手先の減税や給付金では足りず、ここは目先の小さな消費を問題にするのではなく、まさに貯蓄を埋める給付を国家が家計に提供する必要がある。200兆円はGDPの0.4年分だが、個人消費を喚起するためにはそのくらいの国債発行を決断しないといけない。私は200兆円の給付金を暴論だとは思わない。大型給付金こそが最も合理的な景気刺激策であり、その適正な規模は200兆円である。

一家が住宅ローンの残債を完済したり、半減したり、子供の4年間の大学の学費を賄ったりする程度の給付金でなければ、100年に一度の危機の経済対策の意味はない。

b0090336_12535093.jpg

by thessalonike5 | 2009-03-01 23:30
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