本と映画と政治の批評
by thessalonike5
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ハマスの殲滅 - 鍵を握るのは米国の指導者とエジプトの政治
b0090336_12563189.jpg大晦日ながら、イスラエルによるガザ空爆について若干。まず第一に、マスコミが報道している「暴力の応酬」という言葉に対して強い違和感を感じる。今年の3月にイスラエルによるガザ侵攻が起き、イスラエル兵の銃撃によって多くの子供が残虐に殺されたとき、私は記事で次のように書いた。「イスラエルとパレスチナの間で起きている現実を、『暴力の応酬』とか『暴力の連鎖』という言葉で定義するのは間違っている。これらの言葉は、『テロとの戦争』や『悪の枢軸』と同じかそれ以上に作為的で欺瞞的で詐術的な政治言語であり、イスラエルの暴力と非道を隠蔽し、国際世論の中でそれを正当化するイデオロギーである」。今は年末で、日本の民放テレビは報道を止めていて、NHKのニュースでしかこの事件を見知ることができないが、NHKは放送の中で、「暴力の応酬が止まらない」という説明を続けている。「暴力の応酬」という言葉で説明するには、目の前の現実はあまりに非対称であり、この言葉にはリアリティがない。



b0090336_12561765.jpg時事通信も堂々と「暴力応酬」と記事の見出しに書いているが、その記事の中にあるように、12/30時点でのパレスチナの死者は360人で、イスラエルはわずかに4人である。「応酬」という言葉は、例えばボクシングの試合で「パンチの応酬」などという表現で使われる。両者が相応の手数を出し合うときに「応酬」は表現として妥当するのであって、現在のパレスチナとイスラエルの間で起きていることは、リングの上の片方の選手は両手を縛られ目隠しをされていて、それを片方の選手が一方的に殴っているのと同じである。リンチであり、虐待行為に他ならない。ハマスのロケット弾攻撃など、ほとんど抵抗の形式を示す程度のものに過ぎず、イスラエルの凄絶な暴力に対して「応酬」の言葉でバランスする中身の事実とは到底言えない。国語の常識と理性で状況を直視して考えれば、報道者は「応酬」の言葉遣いが的外れで不正確であることが理解できるはずだが、報道者たちは、イスラエルの非道な殺戮を正当化するために「暴力の応酬」の言葉を使う。

b0090336_12564477.jpgこれは教室の「いじめ」と同じだ。報道関係者たちが「暴力の応酬」という言葉を衒いなく使って痛痒を感じないのは、いわゆる国際社会が状況をそのように認知しているからであり、特に国連と米国が、この現実を「暴力の応酬」という状況認識でオーソライズしているからである。否、米国の場合はもっと酷くて、この現実はハマスのテロに対するイスラエルの正当防衛なのである。国連安保理は12/28に「双方の軍事行動の停止を求める報道機関向け声明」を発表しただけで、事実上、イスラエルの行動に目を瞑って放置したも同然の姿勢になっている。潘基文は停戦を呼びかけるだけで、米国や欧州の政府を動かす働きかけをしていない。空爆が始まってもう4日も経ち、これほど多くの犠牲者が出ているのだから、国連事務総長がNYの執務室に座っていてはいけないのではないのか。すぐにテルアビブに飛び、オルメルトに停戦の直談判をして、それを世界の報道機関に取材させなくてはいけないし、ホワイトハウス(かテキサス)に飛び、ブッシュとライスを掴まえて、攻撃停止の説得をしなくてはならないはずだ。

b0090336_12565786.jpgそういう政治をやれば国際世論に訴える力になるはずだが、潘基文はやろうとしない。こういう時に必ず立ち回りのパフォーマンスを見せて点数を稼ぐサルコジも、年末休暇でカーラへの閨房奉仕に忙しいのか、マスコミの前に姿を現さない。エジプトのムバラクは何をしているのだろうと思っていたら、今日(大晦日)の朝日の4面に記事があった。見出しに曰く、「仲介役エジプト苦境」だそうだ。何が「仲介役」だ。何もできていないではないか。すぐにオルメルトに会談を申し込み、拒否されたのなら拒否されたと正直に言って、プレスの前でイスラエルを非難すればよいではないか。その程度のことが何故できないのか。不審に思って外電を調べると、12/28にアッバスがカイロに行って、ムバラクに停戦の仲介を働きかけた記事があった。ところが、会談後の記者会見にムバラクは顔を見せておらず、すなわちアッバスの働きかけは不調に終わっている。なおも情報を追いかけると、実に卒然とする記事が出ていて、12/30にムバラクがテレビ演説を行い、何を言っているかと思いきや、何と、ガザとエジプトの国境であるラファの検問所を開放しないと言っている。

b0090336_1257874.jpg自治政府のアッバスがガザの統治を回復するまで、ガザとエジプトのゲートは閉鎖を続けると言っている。要するに、イスラエルにガザのハマスを殲滅させようと手を貸しているのである。ムバラクの敵はハマスなのだ。この発表には驚いた。政治は汚い。12/28にアッバスがカイロでムバラクと会談したのは、単にイスラエルへの停戦要請の問題だけでなく、このラファ(ガザ南端の街)のゲートの密謀があったに違いないのだ。つまり、イスラエルによるガザ攻撃をアッバスも事実上容認していて、ハマス殲滅を狙っているのである。アフマディネジャドの動向が、テレビのニュースはおろかネットの報道記事でも全く出て来ないので気になっていたが、外信の記事では一応、イスラエルを非難する声明を上げている。国内で発言するだけではなく、こういうときは、モスクワに飛んでメドベージェフと会談するとか、パリに飛んでサルコジに出番を作らせるとか、カイロに飛んでムバラクを説得するとか、指導者ならそこまでやらなくてはいけないのである。朝日の記事では、エジプト国内の最大野党がイスラム原理主義勢力のムスリム同砲団で、ハマスと繋がっていて、ムバラクがハマスと敵対するのはそのせいだと言う。

b0090336_12573474.jpg 結局、問題を解決する鍵は二つで、一つはエジプトの政治であり、もう一つはオバマとヒラリーの対応である。エジプトの民衆がムバラク政権を倒さない限り、ガザのパレスチナ人がイスラエルの暴力から身を守る方途はないと言わざるを得ない。パレスチナはパレスチナだけで自己を解放することは不可能で、ガザはガザ単独でイスラエルからの攻撃を防御できない。ガザとパレスチナの人間の命を守る「国際社会」が必要で、その「国際社会」の端緒は「ガザを守るエジプト政府」である。必要なのは、エジプトのムスリム同砲団とハマスを支援するアラブのネットワークで、例えば、サウジなどから彼らに資金を供給する在野のスンニー派の活動であろう。最早、「テロとの戦い」は政治的大義の正統性を失った。米国のネオコンとイスラエルが中東の正義を独占して世界の世論を靡かせることはできない。であるならば、サウジや湾岸のオイルマネーの恩恵を受けている一部で、再び反米勢力の動きを起こして、エジプトの反政府勢力を本格支援できる可能性もあるのではないか。中東が変わり、パレスチナが救われるためには、エジプトとサウジの政権と政体が変わらなくてはならない。エジプトに有能なリーダーが出現することを期待する。

b0090336_12572380.jpg二つ目のオバマとヒラリーだが、12/29のニュースの映像で、年末休暇でハワイに帰ったオバマが、ショートパンツの格好で優雅にゴルフをプレーしている姿には失望させられた。ガザで子供が殺されているのであり、それを止めることのできる権力を持った責任当事者はオバマなのに、笑ってゴルフを楽しめるとはどういうことか。オバマもヒラリーも人権派弁護士である。人権に国境の壁はない。ガザが人権の例外ということはない。何か言ったらどうなのか。ここにも汚い政治がある。彼ら二人が何も言わないのは、新政権の中東政策からハマスという存在を排除するためであり、ハマスなしの中東政策で新年の米中東外交を展開するためである。厄介なハマスという存在を、不人気のブッシュ政権の手で抹殺させようとしているのだ。血で汚れたブッシュ政権の手をさらに血で汚させ、残酷な政治の始末をつけさせて、自分たちは血に染まらない清潔な手で中東政策を進めようとしているのである。ハワイからでもいい。ゴルフ場のクラブハウスからでもいい。プレスの前でオバマが一言言えば、「民衆を殺すな」と一言言えば、「私は許さない」と一言言えば、ガザの人々の命は救われる。だが、この二つ目の問題解決策の可能性は考えられず、一つ目のエジプトの民衆の蜂起に期待をするしかない。

大晦日なのに、静かに1年を振り返ることはできず、パレスチナ情勢で締めくくりとなった。今は年末も年始もない。私だけでなく、世界中の多くの人々が、そうした余裕のない生活を送っている。ガザの人々と私は同じであり、大晦日だからと言って無視することはできず、年末年始の気分はまだ遠い先の夢なのである。

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by thessalonike5 | 2008-12-31 23:30 | 米国大統領選・グルジア情勢
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