本と映画と政治の批評
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<   2008年 05月 ( 13 )   > この月の画像一覧
にわかマルクス・ブームへの雑感 (2) - 大塚久雄の市場理論
b0090336_12484886.jpg大塚久雄の 『国民経済』 の議論の中に、資本主義発展におけるオランダ型とイギリス型という考察がある。社会科学を勉強した者なら誰でも知っている入門編的な議論で、くどいほど叩き込まされるというか、そういう印象で思い返す者が多いだろう。いわゆる大塚史学の一般論の中核に位置する理論であり、西洋経済史でありながらまさに社会哲学であり、経済政策の基礎とモデルを提供する日本社会科学のシンプルなグランドセオリーであった。大塚史学の資本主義発展論が戦後日本の高度成長にきわめて重要な影響を及ぼしていて、特に大蔵省と通産省の経済政策に影響が大きかったように思われる。以下は、あまり他の人間が言うのを聞いたことがないが、いわゆる中国の改革開放経済、80年代初めから半ばの中国経済を考えたとき、俗に鄧小平路線として大きく括られる政策体系の中で、特に経済や市場に関する政策は誰のどのような理論に導かれたのか。そういう設問を立てて解答を考えると、大塚久雄という名前しか浮かんでこない。

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by thessalonike5 | 2008-05-30 23:30 | 辺見庸・鶴見俊輔・大塚久雄
にわかマルクス・ブームへの雑感 (1) - ポストとノンとネバーと
b0090336_13544767.jpg辺見庸の「資本はすべての意識を食いつくす」の議論を私なりに補足して論じると次のようになる。資本は労働力だけでなく意識まで収奪の対象にする。「資本論」の世界では、収奪は生産過程で行われ、再生産過程は資本の収奪からは自由なのである。資本は生産過程において剰余価値⊿Gを産み出す元である剰余労働力を労働者から収奪する。だが、仕事を終わった後の労働力の再生産過程は、食事や睡眠や団欒など労働者の身体と精神の疲労を蘇生回復するための時間と空間であり、そこには資本の収奪の契機はないとされている。マルクスの「資本論」の段階では、再生産過程において労働者は資本から自由で独立していた。ところが現代では、再生産過程の時間と空間にメデイア資本(テレビ)がどっかりと腰を下ろし、労働者と家族の意識に侵入して内側を支配し、決して自由にはさせないのである。直接的には、辺見庸も番組の中で言っていたが、CMによる絶えざる欲望の刺激と消費の喚起がある。だが、それだけではない。

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by thessalonike5 | 2008-05-29 23:30 | 辺見庸・鶴見俊輔・大塚久雄
資本はすべての意識を食いつくす - 辺見庸の新日曜美術館から
b0090336_12452279.jpg5/25に放送されたNHKの「新日曜美術館」に辺見庸が出演して、マリオ・ジャコメッリ の写真について論じていた。ご覧になった方も多いと思う。この番組での辺見庸のオーラルは素晴らしかった。今、日本の知識人の中で最も水準の高いオーラル・パフォーマンスを見せてくれるのは五木寛之だが、辺見庸は負けていない。視点が鋭く、言葉が深く、語りに惹き付けられて離れることができなかった。NHKの演出がよかったこともあるが、辺見庸の口から出てくる一つ一つの説得力に心を捉えられて身動きができなくなる感動を覚えた。飯田橋のカナルカフェの堀端を老人然と歩いている姿が映され、片足を少し引き摺っている様子が見られたが、話す言葉や表情には脳出血の後遺症は全く感じられず、また大腸がんの大病を患った直後の人間のようにも見えなかった。辺見庸は思っていたよりずっと元気で、以前と同じように精神は剛健で果敢であり、時代と社会を深いところで突き刺す思惟の力に力強いエネルギーが漲っていた。

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by thessalonike5 | 2008-05-28 23:30 | 辺見庸・鶴見俊輔・大塚久雄
近ごろ聞かなくなった言葉 (2) - 政権交代は遠く政界再編は近く
b0090336_13593688.jpg最近めっきり聞かなくなった言葉の二つ目、それは「政権交代」である。新聞でもテレビでもその言葉を聞く機会がぐっと減った。BLOGの世界でも、半年前は民主党の応援に熱中していた無邪気な「政治ブロガー」が、一日の記事の中で10回から20回は熱狂的に「政権交代」を連呼していたが、最近はめっきりトーンダウンの様相を呈している。朝日新聞の紙面では、先週5/23の政界面に民主党の次の選挙のマニフェストに関する記事があり、そこに一回だけ「政権交代」の言葉が出ていた。Googleで検索を試してみると、先週のニュース記事が全く出てこない。「政権交代」の言葉が熱を失っている。「改革」が国民を政治統合するシンボルとしての機能を喪失しているのと同じように、「政権交代」が国民の政治的期待を象徴し導引する言語としての威力と磁力を失いつつある。言わば政治言語としての減価償却が進んでいる。そして「政権交代」をリプレイスして、今後の政治を語るときに頻度を上げた言葉がある。

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by thessalonike5 | 2008-05-26 23:30 | 政局
近ごろ聞かなくなった言葉 (1) - 「改革」の退潮と改革の進行と
b0090336_17334122.jpg昨夜(5/23)の「報道ステーション」に解説者として鳥越俊太郎が出演して、後期高齢者医療制度の問題について提案を語っていた。鳥越俊太郎はこの番組に月に一回だけ金曜日に登場する。今の後期高齢者医療制度は持続可能な保険制度ではなく、保険料負担の急増で払えなくなる高齢者が増えて数年後の制度破綻は確実であること、そもそもの問題は小泉改革で財政再建のために毎年2200億円の社会保障費の削減が決められたこと、その改革行政のために医療や介護や福祉の分野で深刻な弊害が生じていること、これを解決するためには国の予算の根本的な組み替えが必要であること、米軍基地を維持するための思いやり予算の2200億円を社会保障の予算に回す決断をするべきであること、を明確に述べた。鳥越俊太郎が、国の予算を組み替えて防衛費を削って社会保障に回せと主張するのを聞くのは二度目で、昨年末の「報道ステーション」でも同じ発言をしていて、ブログの記事で取り上げている。

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by thessalonike5 | 2008-05-24 23:30 | 政局
反中プロパガンダの社会体制 - リップマンの「擬似環境」とネット
b0090336_14434017.jpg辺見庸の6年前の北朝鮮拉致問題に関するマスコミ批判を読み返して、あらためて正鵠を射た議論であると思うし、こうした批判をなぜ辺見庸だけが行って、他の人間からは誰も出て来なかったのか不思議に思われて仕方がない。マスコミの評論家はおろかアカデミーの学者からも一人も出なかった。逆に左派なりリベラルなりを看板にしている学者が精力的に「拉致問題の解決」に関与して「救う会」と共闘する姿があった。ほぼ同じ時期のイラク戦争への自衛隊派遣には9条護持の立場から強く反対しながら、拉致問題に対しては右翼と同じ制裁論で隊列を組んだ左翼が多かった。あるマスコミ文化人は、自身のHPでは辺見庸をしきりに持ち上げながら、テレビでは「救う会」のスポークスマンのように立ち回り、政府の弱腰を糾弾して北朝鮮に対する「さらなる圧力」を煽っていた。昼の顔と夜の顔が全く逆だった。辺見庸の拉致問題論には「救う会」だけでなく「家族会」への批判も射程に含まれている。

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by thessalonike5 | 2008-05-23 23:30 | 震災とプロパガンダ
チベット問題と北朝鮮拉致問題 - 6年前の辺見庸のマスコミ批判
b0090336_1654490.jpg拉致事件についてのまさに怒涛のような報道は、その量の夥しさと裏腹に記事の質がなぜか均一で、ナショナルな情報のみをしきりに煽るという、この国独特のパック・ジャーナリズムの病理を、またもやいやというほど見せつけている。パック・ジャーナリズムとは(中略)記者らがウンカよろしく一群(パック)となってニュース源におしかけ、同一歩調かつ横一線で取材し、どれも大差ない記事、番組をこれでもかこれでもかと流しつづけることである。これは戦前、戦中からひきつづく日本マスコミの「得意技」ではあるのだが、(中略)拉致事件に関するパック・ジャーナリズムの弊害はかつてなく深刻だ。なによりも拉致事件報道は総じて一元的で、多分に感情的であり、いずれも深い歴史的観点に欠ける。いや、情緒的である分だけ、深い歴史的観点をもちだすこと、すなわち異論をさしはさむのを許さない危険な雰囲気を醸しているのである。      (『いま、抗暴のときに』  P.123)


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by thessalonike5 | 2008-05-22 23:30 | 北朝鮮拉致問題
パンダを邪悪のシンボルに貶下するマスコミの表象転換の錬金術
b0090336_15121793.jpgこの間の反中プロパガンダ報道の激流の中で、私が最も関心づけられ、そして甚だしい不快感を覚えさせられた問題は、上野動物園へのパンダの貸与に関する報道だった。特に「報道ステーション」の放送の中で、上野動物園で幼児を抱っこした30代の母親が出てきて、「レンタル料が高すぎるのでパンダは要らないと思います」と発言した取材映像があり、それを見たときに背筋が凍りつく気分になった。この母親は本当に偶然にその場所にいた一般市民で、本心でそう発言したのをクリップに編集したのか。それともテレビ朝日が意図的に用意したやらせのサクラなのか。古館伊知郎の徹底した反中プロパガンダの報道姿勢とテレビ朝日の体質から考えれば、やらせの可能性は十分にある。予め何十人かの見物客にスタッフが事前のヒアリングを行って、その中で古館伊知郎の反中宣伝に都合のいい右翼的な意見を持ったサンプルを抜粋して、番組で使うべく「本番」用のインタビュー映像を撮影した可能性もある。 

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by thessalonike5 | 2008-05-21 23:30 | 震災とプロパガンダ
Coming War With China And Korea - ばらさよ議協国カ六
b0090336_13311450.jpg中国救援の募金に応じていただいたブログ読者の皆様に心から感謝を申し上げます。 今年の憲法記念日の集会で、湯川れい子が「戦争はあっという間に起きる。平和は平和のうちにしか守れません」という言葉を残している。実際に少女時代に戦争を体験した人間の偽らざる回顧と証言であり、当時を知る人間も知らない人間も、重く受け止めて考えるべき言葉であるように思われる。多くの者にとってそれはあっと言う間に起きたのだろう。私は、ブログを通じて中国と日本の戦争の始まりを危惧し、その状況への進行に対する注意と警戒を音量を上げて発し続けているけれど、その言葉をリアリティを伴って受け止めてくれる人間はきわめて少ない。いわゆる「護憲派」と称して毎日ネットの中で「9条」を連呼している一群の者たちがいるが、彼らにも日本と中国の戦争の警鐘は全く絵空事の妄想話のようであり、意識の埒外にある想定であるらしい。

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by thessalonike5 | 2008-05-20 23:30 | 北朝鮮拉致問題
日本の一人一人が小さな援助隊の一員となって小泉崇に続こう
b0090336_13431167.jpg首相の温家宝に続いて国家主席の胡錦濤と副首相の李克強が四川省に入り、さながら首都が北京から成都に移動した観がある。まるで日本史の幕末の京のようだ。温家宝は当分は成都を離れられないかも知れない。日本のマスコミは、中国政府の震災への対応が遅れているというネガティブな印象を視聴者に刷り込む偏向報道に躍起だが、私にはそのようには見えない。空前の被害を出しているのに、被害状況の把握と発表は迅速で、対策本部の機動性と戦略性が伺われる。何故かと言うと、例えば、5/18に路上で被災者が援助物資を運ぶ車を取り囲んで奪い合う映像が流され、週末の日本のメディアは一斉にその「奪い合い」を報じ、中国政府の対応を叩く報道でニュースを埋めていた。ところが、日本のテレビを見ていると、5/17も、5/18も、どのテレビ局も毎日同じ映像を流している。反中プロパガンダに利用しているわけだが、その映像は中国の国営テレビが撮影して放送したもので、それが何度も繰り返し使われている。 

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by thessalonike5 | 2008-05-19 23:30 | 震災とプロパガンダ
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