本と映画と政治の批評
by thessalonike5
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オバマ勝利プロス・アンド・コンス(3) - 暗殺の危機と騒乱の予感
b0090336_11455826.jpgオバマ新大統領誕生で沸いた先週、それと並行して気になる情報が米国から発信されていた。投票が迫るに連れ、選挙の情勢がオバマに断然有利になり、それに伴って、全米で銃器の販売が急増したというニュースである。記事では、オバマが銃規制に前向きであるため、大統領に就任したら銃の販売が禁止になる可能性があり、その前に駆け込みで購入しておこうとする需要が喚起されたと説明されている。米国の10月の新車販売台数は前年比32%減で、25年ぶりの低水準に落ち込んだが、逆に、銃の方は10月の売上実績が前月比15%増と急伸、しかも恐ろしいことに、10月に売れた118万丁の銃のうち「ロングガン」と呼ばれる大型銃が15万丁を占めていて、「選挙の翌日から自動小銃を求める人からの問い合わせが増えた」という販売店経営者の声が紹介されている。何故、殺傷力の高い大型銃や自動小銃がこれほど急に売れなければならないのだろうか。車の代わりに大型銃。この需要の中身について、単にマニアの趣味とか、狩猟のニーズとか、そうした事情だけで説明することが可能だろうか。 



b0090336_11465971.jpg先週末、テレビ朝日の番組に出演した青山繁晴が、米大統領選に関するコメントで、オバマが暗殺される可能性は相当に高いという物騒な発言をした。青山繁晴によると、警備当局は米国の威信を賭けてオバマの身を守るだろうが、オバマ暗殺の謀略を画策している一部は米軍の内部にもあり、彼らが手を下すとなれば、戦闘用の重火器や桁違いの爆薬量の使用が考えられ、シークレットサービスが狙撃手の弾道からオバマを守るレベルの護衛では収まらないと言う。不気味な予想だが、十分にあり得る話であり、田中宇などが屡々言っている「軍産複合体」という存在を状況要素として当て嵌めると、この陰謀話がさらに現実味を帯びて深刻に感じられる。私の危惧は、そこからさらに一歩踏み込んだもので、もし彼らがオバマ暗殺に出るときは、単にオバマ個人をヒットして作戦終了ではなく、全米で人種対立の憎悪を煽り、流血の惨事が頻発する騒乱の状態まで、政治的に計画するのではないかと想像が及ぶ。具体的に言えば、狂信的な白人至上主義団体による黒人襲撃の暴力がセットされ、黒人を挑発し、黒人たちが暴発するように仕向けるのではないか。

b0090336_11464227.jpgそうでなくても、オバマの命を奪われたときの黒人たちの激怒は想像を絶するもので、それが白人至上主義者の仕業だと知れば、報復に出ようとする過激な者が出現しておかしくない。米国は一気に不穏な情勢となり、60年代のように、人種間の対立と憎悪に基づく内乱の危機の事態に発展する。オバマ暗殺を仕掛ける側の政治目的は、米国に再び人種の壁を築くことであり、今度の大統領選挙で達成した米国の歴史的進歩を破壊し後戻りさせることであり、すなわち反動である。二度と黒人や有色人種が大統領を目指すことのない米国を固めることであり、白人優先の暗黙のルールを磐石に定着させることである。それは、これから縮小する米国の富のパイを白人が独占するのだという経済方針の宣告と定置でもある。平等には分配しない。不平等に分配する。不平等分配の原理は人種(肌の色)に基づく。この10月の銃器販売増加の動向は、米国の国民が、無意識的にも身辺で銃撃戦の武力衝突が起きる将来を想定し、それに対する備えとして、本能的に武器を準備しているのではないか。リセッションと大統領選挙が同時にあり、共和党に投票した47%、すなわち白人保守層は確実にフラストレーションになっている。

b0090336_11462950.jpgオバマ新大統領の登場をゴルバチョフとのアナロジーで考察する見方は、どうやら私以外の他の方面からも出ているらしい。私は、オバマがグラントパークで勝利演説をやった翌日に、この演説は歴史に残るもので、リンカーンのゲティスバーグの演説やケネディの大統領就任演説に匹敵して、末永く語り継がれるものになるだろうと感想を述べた。そのときは、気づかないままそう書いたが、リンカーンとケネディは暗殺された大統領だった。単に演説が秀逸で印象的だったからだけでなく、暗殺された指導者だったからこそ、それが名演説として歴史に刻まれる結果になったのである。暗殺されていなければ、二人がどれほど偉大な指導者として歴史に記されたかは分からない。同じことがゴルバチョフに言える。あのとき、監禁された別荘でクーデター派によって殺されていれば、ゴルバチョフの政治指導者としての評価は現在とは違っていたはずで、リンカーンやケネディと同じ「聖人」の地位を得て、後世の人々から多大な尊敬を受ける偉人になっていただろう。革命家や政治変革の指導者は、歴史の英雄となるためには非業の死を遂げなければならない。老いを晒して生き延びてしまうと、その男は名声を得られないようにできている。だが、歴史は不思議なもので、アイロニーに満ちている。

b0090336_11471496.jpg生き延びた人間が、生き延びて、周囲から謗られつつ、見事に徳川幕府やソ連邦を終わらせた。そのように考えながら、このアナロジーをさらに展開しよう。もしオバマ暗殺という事態が起きれば、米国は人種対立で国家分裂の危機に陥るものの、オバマの「一つの合衆国」の理念は輝きを増し、後に続く者が出て来て、その場合の先頭に立つ新指導者は間違いなくミッシェルだろうが、合衆国の理想と使命を実現すべく、オバマの夢の実現に向けての政治が最終的に勝利するという予想が立つ。リンカーン、ケネディ、オバマと続く不屈の営みに米国史を据え直し、どれほど悲劇と不幸に襲われても、米国は理想の米国に向かうのだという信念と熱情が湧き上がり、最終的には国民が一致結束する方向に向かうという図が考えられる。逆に、オバマがゴルバチョフのように難を逃れて任期を無事に全うすれば、ドル暴落と米国債償還不全とIMF解体に直面する大統領になり、GDPのマイナス成長が続く中で有効な対策がとれないまま苦悩し、イラクとアフガンからの敗走を余儀なくされ、さらに、不本意ながら東半球に展開した米軍基地の放棄撤収を決断しなければならない大統領になる。「唯一の超大国」の地位を失い、音楽やスポーツでも世界を領導することができなくなる「普通の大国」になる。アナロジーはそうした推論とイマジネーションに行き着く。

b0090336_11472844.jpgオバマの経済政策について、勝利演説の直後からマスコミでも断片的に報道されるようになった。正確ではないが、言われているところを拾い上げれば以下のようになる。①国民の95%を占める中所得層と低所得層に減税を実施する、②自動車産業の労働者の雇用を守るべくBIG3を救援する、③保護貿易主義の傾向がありNAFTAや韓国とのFTAに消極的、④米国で競争力のある低炭素自動車を自製する、⑤20兆円のインフラ建設の公共事業を発動して700万人の雇用を創出する、⑥金融危機を招いたウォールストリートに厳しい規制をかける、⑦国防費を削減して財政健全化をめざす。どれも素晴らしい。非常にいい。経済政策の姿勢は満点で、オバマを応援したくなる。①-⑦は、政治家オバマのオリジナルな思想が滲み出た経済政策で、低所得者の医療と教育を充実させようとする社会政策への意欲や人権思想と符牒が合っている。極端に言えば、社会民主主義的な性格の強い経済政策であり、新自由主義的な契機は一切なく、現在の米民主党の中では最左派の立場と言ってもいいだろう。従来のワシントンの政治と決別するというラディカルな主張とも一貫性がある。しかし、噂されている財務長官人事がルービンやサマーズで、これはクリントン時代にホワイトハウスで垢にまみれた古狸の復活であり、そして首席補佐官のエマニュエルもクリントン時代の補佐官である。

b0090336_1147435.jpgこれでは、オバマが最初に公約して支持された「ワシントン政治との決別と変革」が腰折れになったように見える。①-⑦は本当に実行に移すのか。特に、私が注目するのは⑤の金融政策で、今週末のG20サミットに向けて、オバマの政権チームがどのような対応を示すか興味深い。昨夜(11/10)の「クローズアップ現代」は金融問題がテーマになった放送で、解説席に伊藤隆敏を呼んでいた。この男は、今年の3月に例の日銀副総裁人事で問題になった人物で、財務省が推す大蔵官僚出身者で、さらに筋金入りの新自由主義者だということで、民主党から敬遠されて日銀副総裁になり損ねた男である。一橋大学で竹中平蔵と同期であり、小泉・竹中の改革政治の時代に重要方面に出没、一昨年、安倍内閣が発足したときに経済財政諮問会議の議員に就任した。最近の「クローズアップ現代」は、経済特集をやる度に首を傾げる不適当な人物が解説席に座っている。古森重隆と福地茂雄から相当に厳しい圧力が加えられているのだろう。昨夜の番組で最も重要な情報は、今週末のG20サミットで何が問題になり、新興国はどのような要求を出し、欧州勢はどう調整を図るのかという問題だったが、伊藤隆敏は巧妙に話題を逸らし、欧州域内の金融事情に論点をスリカえ、どうでもいい適当な一般論で時間を埋めて、肝心な国際金融の規制と体制改革の問題について一切紹介しようとしなかった。出鱈目な官僚解説で、聞きながら憤りを覚えて仕方がなかったが、伊藤隆敏の話を真に受ければ、G20サミットなど何の中身もない形式行事になる。

b0090336_12144258.jpg番組の映像では、ブラウンの映像が何度も出たが、ナレーションでも、解説でも、「新ブレトンウッズ」や「ブレトンウッズ2」という言葉は一言も出なかった。サルコジがブッシュのキャンプデービッドに飛んでG20開催を決めた件についても、サルコジが具体的にIMF改革として何を求めたのか説明がされなかった。また、ASEMでサルコジとメルケルが北京まで飛んだ理由についても、抽象的にボカされ、具体的に証券化商品の規制やヘッジファンドの規制が論議された経過が報告されなかった。事前の伊藤隆敏側からの進行要請と台本設定でそのような内容になったのかも知れないが、これは、敢えて言えば国谷さんにも過失が責められなくてはいけない。問題になっているのは国際金融の取引規制であり、そしてドル基軸通貨の体制なのだ。昨夜はその説明が全く無かった。新興国が求め、サルコジが間に入って調停を図っているのは、①証券化商品の規制、②ヘッジファンドの規制、③投資銀行の為替取引規制、④格付け会社の規制と適正化、⑤レバレッジの規制、である。実際に、先週末にサンパウロで行われたG20サミットの準備会合では、共同声明に盛り込まれた合意の中に、格付け機関に対する監視と規制の強化の項目が挿入されている。これは画期的な一歩であり、国際金融世界から新自由主義を一掃する一里塚となるものだ。「クローズアップ現代」ではその事実こそを伝えなければならず、週末のG20サミットが1944年のブレトンウッズ会議以来、半世紀ぶりに世界の金融秩序を根本から変える可能性のある歴史的な会議である点を強調しなければならなかった。

あれでは経済報道として完全に失格だ。官房長官にも猛省を促したい。

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by thessalonike5 | 2008-11-11 23:30 | 米国大統領選・グルジア情勢
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