本と映画と政治の批評
by thessalonike5
以前の記事
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
more...
最新のトラックバック
多層式夢幻能
from NY多層金魚 = Conce..
「新しい翼」Neue F..
from NY多層金魚 = Conce..
「新しい翼」Neue F..
from NY多層金魚 = Conce..
ストロベリー・リポート ..
from NY多層金魚 = Conce..
ストロベリー・リポート ..
from NY多層金魚 = Conce..
秘密保護法 マスコミ(特..
from 聴く 見る 読む 考える
タネたちは故郷をめざす ..
from NY多層金魚 = Conce..
安重根
from 聴く 見る 読む 考える
走って逃げよう! 原発か..
from NY多層金魚 = Conce..
走って逃げよう! 原発か..
from NY多層金魚 = Conce..
空間絵画としてのル・コル..
from NY多層金魚 = Conce..
そして12年目の9月11..
from NY多層金魚 = Conce..
わたしもベルリンオリンピ..
from 御言葉をください2
イスラエル化してゆく日本
from 聴く 見る 読む 考える
花はどこヘ行った + ..
from NY多層金魚 = Conce..
「ナチス改憲」失言、麻生..
from 酒井徹日記―平和・人権・民主..
洪水からの目醒め(5)ド..
from NY金魚
密猟者が 発電所跡で秘宝..
from NY金魚
アンドロイドは遺伝子組み..
from NY多層金魚 = Conce..
アンドロイドは遺伝子組み..
from NY多層金魚 = Conce..
アクセス数とメール


since 2004.9.1

ご意見・ご感想





S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30
access countベキコ
since 2004.9.1


















オバマ勝利プロス・アンド・コンス(1)- 歴史的演説と「最後の将軍」
b0090336_10514849.jpgグラントパークで行われたオバマの大統領選勝利演説は、歴史に残る感動的な名演説だった。リンカーンのゲティスバーグの演説やケネディの大統領就任演説に匹敵する至高のもので、その感動の瞬間に立ち会った者によって、後世にながく語り継がれることだろう。よく構成が練られた完成度の高い演説で、後半のアトランタに住む106歳の黒人女性の人生を通して、米国現代史の歩みを格調高く語り上げ、それが自由と民主主義の勝利と前進の歴史であり、米国が国民にとって誇りと希望を持てる国であることを確信させる見事な内容になっていた。スライドショーを見るようだった。特に印象的だったのは、「わが国の本当の強さは、富や武器によって齎されるものではなく、民主主義、自由、機会の理想の力によって、挫けることのない希望の力によって齎されるものだ」という件で、公園を埋めた12万人の聴衆からひときわ高い歓声が上がった。米国の理想と歴史の原点を説き示す演説であり、指導者の演説としてこれ以上ない素晴らしいものだった。



b0090336_1052354.jpg司馬遼太郎の小説に『最後の将軍』という一作がある。本木雅弘が主演で大河ドラマにもなった。オバマの演説に聞き惚れながら、『最後の将軍』が頭に浮かんだ。慶喜は15代続いた徳川将軍の中でも、開祖の家康を別格にして最高の人物で、文武に秀で、胆力があり、そして多芸であり、マルチな才能が家康を彷彿させるところから、「まるで神君のような」と評され、幕府周辺の期待を一身に集める存在だった。慶喜だからこそ大政奉還ができた。龍馬の船中八策は、ほぼ同じ政治構想を慶喜が持っていて、側近の西周を使って憲法や議会の国家機構を策案し、徳川宗主が大統領になる「近代国家」を準備していた。「上からの改革」による近代化であり、(これは私の試論だが)久光と組んで京に薩幕政権を立て、薩摩と徳川の連立政権で「上からの近代化」を推進する戦略だったと思われる。封建の保守は久光が、近代への革新は慶喜が代表する。だが、その構想は西郷と大久保と岩倉に潰される。慶喜が傑出した人物だったからこそ、徳川幕府を終わらせることができた。

b0090336_10521430.jpgオバマは、44代の歴代大統領の中でも、おそらく最高の人格的資質を持ったカリスマ的指導者だろう。これほど心に響く素晴らしい演説をする政治指導者は見たことがない。ゴルバチョフをはるかに上回る。大統領選の結果について、マスコミはオバマの圧勝と報じている。確かに選挙人の獲得数はマケインの163人に対して338人(11/5 22:40 CNN集計)と圧倒している。州の数でも首都と26州を制して、マケインの21州を上回った。だが、注意して見るべきは実際の得票率で、オバマは52%でマケインが47%となっている。得票率は5ポイントの僅差であり、これほどの金融危機と生活不安の中で、そしてブッシュ政権に対する拒絶反応の中で、さらに、新聞各社の支持表明と事前のテレビ報道のオバマ歓迎演出の中で、ありとあらゆる風がオバマに吹きながら、投票箱を開けてみば、僅かに5ポイントしか得票差がないという事実は一体どう理解すればよいのだろう。直前の世論調査の数字から考えても、この結果は圧勝ではなく辛勝であり、薄氷の勝利とさえ言ってよいのではないか。私には圧勝という認識は全くない。

b0090336_10524476.jpg今度の大統領選は歴史的なもので、関心が異常に高まり、前回より投票登録者数が4000万人も増えた。全米の投票所では3時間待ちの長い列ができ、初めて投票する人間が数多く掘り起こされている。普通に考えれば、これらの掘り起こされた有権者はオバマに雪崩を打って投票したと思いがちだが、実際にはそうではなく、米国で多数を占める白人の有権者でオバマに投票した割合は40%しかない。残りの60%はマケインに投票した。選挙戦を伝える報道では、選挙結果を総括する報道でもそうだが、オバマ陣営が草の根のボランティアの動員と幅広い資金寄付に成功し、ネットをフルに駆使し、圧倒的な資金力と運動員数で地域に選挙事務所を設け、従来は政治に無関心だった層を掘り起こして、フットワークでマケイン陣営を押しまくったというストーリーになっている。その一面は確かにある。だが、現実に白人層の60%がマケインに投票した数字を見れば、マスコミが報道しない選挙の裏面が見えてくる。それは、危機感を感じた白人の保守層が、オバマの当選阻止のために奮起して動き、草の根保守の白人票を掘り起こした政治的事実である。

b0090336_10525666.jpgこれまで選挙に行ったことのない人間が、オバマ阻止のために一票を投じている。もし、リーマンショックと金融危機が起きなければ、僅差の勝利はマケインが手中にしたことだろう。ブラッドリー効果は生きていた。52%の得票率でオバマ圧勝などと言うのは間違いだ。「ウイナー・テイクス・オール」のマジックに過ぎない。今回、米国の政治が人種の壁を越える歴史を刻んだのは事実だが、それを阻止するために、他のあらゆるリスク(経済政策に無知な高齢候補者へのコミットメント)に目を瞑って、空前の白人票が動いた反動の事実にも注目する必要がある。経営者や投資家など富裕層がマケインに投票するのは理由がわかる。南部や中西部に蔓延る宗教右翼が共和党を支持するのもわかる。だが、この経済危機の直撃を受けて、中間層から貧困層へ没落する恐怖に直面させられているはずの米国白人の多数が、これほど真っ二つに割れ、過半数が新自由主義と戦争継続路線の共和党に一票を入れている事態が信じられない。マケイン支持を表明した新聞社などあっただろうか。47%のマケイン票の今後の動向が気になる。彼らはオバマの「一つの合衆国」の説得に応じるだろうか。

b0090336_13581735.jpg思えば、慶喜こそ、まさに幕末の混乱の中で分裂する日本を一つに統合するためのシンボルであり、体制側が出してきた最後の切り札だった。開国と攘夷に分裂し、佐幕と尊皇に分裂した日本の政治を一つに纏めるため、この男を頂点に据える以外にないと目されたカリスマ的貴公子だった。慶喜を担いだのは、雄藩筆頭の薩摩であり、幕府内の開明改革派であり、公武合体派であり、最後の最後は龍馬の土佐で、それは内乱を避けるための大政奉還策だった。われわれは開国党や攘夷党に分かれた個々の集まりではなく、佐幕ステートと尊皇ステートの集合体でもなく、われわれは一つの日本国だと、最後に慶喜を担いだ龍馬はそう言いたかったのだろうが。武士も、百姓も、町人も、そろって出したアンサーが大政奉還なのだと。それから、さらに、さらに、歴史の想像を膨らませれば、開祖のレーニンは別格として、歴代8人のソ連邦指導者の中で、最も人格的資質が優れ、人間的魅力に満ち、世界の聴衆を魅了する演説をしたのは、最後に登場したゴルバチョフだった。ゴルバチョフだから、ソビエトの歴史に終止符を打てた。帝国主義に勝利する共産主義の闘いよりも、「人類共通の家」の建設だった。優秀な政治指導者でなければ、ソ蓮に幕を引くことはできなかっただろう。

ペレストロイカなどありえず、ベルリンの壁崩壊の引き金となったゲート開門も「ダー」とは言わず、反乱を起こしたバルト3国は地上軍の大兵力で瞬時に圧殺され、エリツインが出る芽もなかっただろう。歴史はどこまでもアイロニカルでパラドクシカルだ。

b0090336_10544386.jpg
b0090336_10545498.jpg
b0090336_10571242.jpg

[PR]
by thessalonike5 | 2008-11-06 23:30 | 米国大統領選・グルジア情勢
<< オバマ勝利プロス・アンド・コン... 昔のIndexに戻る WBSの「揺れる資本主義」報道... >>