本と映画と政治の批評
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NHKスペシャル『世界同時食糧危機(1)』 - 米国の食糧戦略を批判
b0090336_16132521.jpgNHKが経済報道に力を入れ始め、毎週のように見応えのある大型番組が放送されている。10/17の「世界同時食糧危機(1)」も内容の濃い報道の提供だった。番組では、穀物価格の高騰が資金余力のない輸入国に飢餓をもたらしている状況が報告され、中米エルサルバドルの国民が口にする食物の摂取量が2年前の半分に減っている事実が紹介されていた。エルサルバドルでは数年前に農産物の輸入自由化に舵を切り、安い輸入穀物に頼る政策を方針化したため、国内の農家が廃業に追い込まれ、この危機に直面して国内のコメ生産を上げようとしても不可能になっていた。農業省に勤務する公務員ですら食糧を買えず、貧困層では母親の母乳が出ないために乳児が栄養失調になり、前によく見たアフリカと同じ惨状がエルサルバドルを襲っていた。一方で、穀物メジャーと米国農家は空前の繁栄を謳歌し、収入の増加に笑いが止まらない様子が映し出されていた。価格高騰の原因は、新興国の消費量拡大の趨勢に乗じた投機マネーが穀物を金融商品化したことによる。 



b0090336_16135424.jpg番組は、こうした米国によるグローバルな穀物支配が世界を蓋う歴史過程を追いかけ、戦後の米国が国内で余剰生産された穀物を海外市場に売り掃くために、日本を皮切りに世界の国々の人々の食習慣を巧妙に改造し、米国の穀物輸入に頼らざるを得ない貿易構造に組み変える戦略を実行してきた内実を説明した。各国は米国の安い穀物を大量に輸入し、特に米国のトウモロコシを家畜飼料にして食肉を生産、国内の食肉需要の増大に対応してきた。現在、人口13億の中国が米国の戦略の標的とされ、脂肪分の多い牛乳と肉食の消費文化の普及が米国機関の手でエバンジェリズムされている。番組は、食糧危機がまさに金融危機と同質の問題であると定義し、米国が米国のために追求してきた戦略によって世界の食糧事情が支配され、その矛盾が食糧危機として弱者を痛めつけている構図を浮き彫りにしていた。米国の身勝手な戦略の犠牲にさせられた世界中の弱者が、今日明日の食糧を手に入れられない状況に陥っていて、日本も間もなく商店から食料品が消える日が来ることを警告していた。

b0090336_1614580.jpgNHKの報道が、これほど鋭く米国の農業戦略を批判するのは初めてで、日本政府に食糧自給への政策転換を迫る報道で世論を喚起するのも初めてではないか。時代は大きく変わった。中曽根康弘が「輸入品を買いましょう」とパネルを使って国民に訴えていた25年前を思い出す。20年前の牛肉オレンジの自由化は日本農業にとって大きな分水嶺となる政治的事件だったが、当時のNHKは自民党政府の側に立ち、貿易不均衡是正のためには農家が潰れても仕方がないと言わんばかりに大本営報道に徹していた。10/17の放送では、特に牛乳生産の酪農農家と飼料トウモロコシに焦点が当てられて、トウモロコシのコスト高のために農家が次々と廃業に追い込まれている深刻な現状が報じられた。これまで日本の農家は、規模拡大、すなわち飼育頭数を増やして生産を上げることで収益の維持に努めてきたが、飼料高騰でそれが裏目に出て、自営努力では吸収不可能なコスト高に直撃されていた。その中で、飼料トウモロコシを自ら栽培して自給している農家があり、30頭ほどの小規模経営ならギリギリ採算が取れる例も紹介されていた。

b0090336_16141990.jpg日本の農業においては小規模経営を見直すときではないのか。民主党の農家最低所得保証の有効性をあらためて確信する。今から2年前、菅直人がこの政策を発表したときは、私もその「バラマキ」的性格に少し戸惑いを覚えたが、この2年間の経済と世論の動きは、民主党の農家最低所得保証の政策の正当性を際立たせてきたと言える。輸入穀物の高騰と度重なる中国からの有毒輸入食料品事件の発生によって、これこそが国を救う焦眉の課題だと誰もが納得するようになった。3週間前のTBS「ブロードキャスター」の最終回が食をテーマにした特集で、高い年収で優雅に仕事をするノルウェーの沿岸漁業の漁師と、魚が獲れなくなって廃村になった五島福江島の入り江の漁村がコントラストで紹介され、ノルウェーのように国家が農林水産業者に直接に所得保証をすることこそが、国の食を守り、地域の暮らしを守る唯一の方法だとメッセージしていた。あの福留功男がそう言っていた。これまでの「ブロードキャスター」の新自由主義プロパガンダが嘘のような最終回の放送で、そこに呼ばれた新自由主義宣教師の北川正恭が顔を引きつらせていたのが印象的だった。

b0090336_16143129.jpg政府による緊急資本注入は、銀行より先に酪農家と漁師に実施しなければならない。そして、日本の食糧政策を輸入から自給へと根本的に転換する必要がある。これまで、日本の農業と漁業は政府によって一方的に潰される方向でのみ処遇されてきた。製造業が海外市場を広げて貿易黒字を積み重ねるのに連れ、その犠牲として、安価な海外食料品の輸入へと国策が方向づけられ、産業として切り捨てられる不遇を押しつけられてきた。現在、日本には3.8万km2の休耕田があり、稲の作付面積1.68万km2の2倍以上の広さで、その面積は政府による長年の減反政策のために年々拡大している。農業政策を転換して、まず休耕田を農業生産に再活用する政策が打ち立てられる必要があり、そこに従業する人間と所得が手当されなければならない。だが、それだけでは不十分で、もっと大規模な国家プロジェクトで農地を創出する計画を検討してもよいのではないか。旧ソ蓮のソフォーズのような大型の生産基地を各地に造成して、日本の穀物自給を一気に高め、穀物輸入を激減させる方策を考えることはできないだろうか。例えば離島を土地整備して、アイオワ州のような大規模農場を作れないか。

b0090336_16152264.jpgと、そこまで考えて、自給政策を立案する試算のために基礎データを拾ってみた。そして、日本の穀物輸入の規模が尋常でない事実を知らされ、穀物を自給することがどれほど困難かを数値で確認させられた。トウモロコシだけに限って、日本は米国から1600万トン(飼料分は1200万トン)を輸入している。この数字は米国の2007年のトウモロコシ全生産量の5%を占める。米国の2007年のトウモロコシの作付面積は36.6万km2で、これは米国土全体の3.8%を占め、日本の国土面積と同じ広さになる。したがって、日本向けのトウモロコシ生産のために要されている米国の作付面積は18.300km2となり、米国と同じ大量生産方式を用いても、日本は国内のトウモロコシ需要量を自給生産するために18.300km2の土地をトウモロコシ農場として用意しなければならない。この面積は日本国土の5%であり、四国(37.793km2)の半分の広さとなる。現在の稲の作付面積よりもさらに広い面積がトウモロコシのために必要となる。離島を利用できないかと考えて、佐渡島(857km2)や種子島(454km2)の面積を足し合わせる試算作業をしていたが、とても足りず、1600万トンのトウモロコシ自給計画をギブアップした。

b0090336_16153321.jpg下北半島とか大隈半島とか、十勝平野とか北上山地などはどうかと、地図を睨みながら思案を巡らしたが、何と言っても1600万トンのトウモロコシ輸入量は多すぎ、自給政策立案のための試算は限界に突き当たる。国土の5%をトウモロコシ畑に供出するのは無理だ。逆から考えれば、日本人の食生活が輸出製造業に支えられて無理に富裕化しているのであり、製造業の競争力が衰えて、海外でクルマが売れなくなれば、この大量の輸入トウモロコシで支えられている牛乳や豚肉や鶏肉は口に入れられなくなるのである。考えられる試案としては、かなり突拍子なアイディアだが、例えばロシア沿海州のウスリースクからハンガ湖一帯の広大な土地を借地して、借地料を払い、巨大なトウモロコシの生産基地を整備することぐらいだろうか。緯度的には旭川から名寄の線、北緯44度近辺で、米国ではアイオワとミネソタの州境の線になる。無論、そのためにはロシアとの平和条約と友好関係の前提が絶対的に必要な条件となる。日本の近辺で、四国の半分の広大な面積をトウモロコシ畑に開拓できる原野が見つけられそうなのは、候補地としてはロシア沿海州南部しか思いつかない。サハリンでは寒冷地すぎる。北緯50度のオンタリオでトウモロコシ栽培は無理だろう。

今日(10/19)は放送の第2回で、大豆についての特集が予定されている。これも見逃せない。この番組で穀物と食糧の問題について理解と関心が広がった。番組の司会はかわいい伊東敏恵であり、伊東敏恵が出ているだけで放送を見る動機づけになる。NHKらしい魅力に満ち溢れた、感じのいい田舎育ちのお嬢様。早く夜9時のニュースにキャスターとして復帰して欲しい。山口県立徳山高校出身、東京女子大学卒。
 
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by thessalonike5 | 2008-10-19 23:30 | 新自由主義と反貧困
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