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本と映画と政治の批評
by thessalonike5


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NY株-1万ドル割れ、為替-1ドル101円、原油-1バレル87ドル台
NY株-1万ドル割れ、為替-1ドル101円、原油-1バレル87ドル台_b0090336_910815.jpg昨夜(10/6)の午後11時14分にNYSEが1万ドルの大台を割るのを確認した。午後11時前からチャートをずっと見ていたが、DOUもNASDAQも下げ足がとても速く、グラフの折れ線が急下降して、1万ドルを切ってからも下げ足は止まらなかった。為替もすぐに1ドル101円台になった。原油のチャートは1バレル90ドル近辺で上下を続けたが、結局、取引が終わった時点で87ドル台にまで値を下げた。今朝(10/7)の日本の新聞は、どれもNY株の1万ドル割れを1面トップの大見出しにして報じている。NYSEが1万ドルを割るのは2004年10月以来4年ぶりだが、感覚的には1万ドルを超えたのはもっと昔だったような気がする。米国経済のバブルに感覚がすっかり慣れていた。4年前の当時は、竹中平蔵でさえも、米国の株価は実体よりも高い水準にあると言っていて、誰もがそう思っていたが、慣れてしまうと1万ドル割れが大事件のように思えてしまう。無論、大事件には違いなく、おそらく1万ドルを回復することは難しいだろう。本格的な回復は10年後の将来になるだろう。



NY株-1万ドル割れ、為替-1ドル101円、原油-1バレル87ドル台_b0090336_9103234.jpgそして間もなく1ドルは100円を切る。こちらの方は、一度100円を割れば、未来永劫に回復しないように思われる。円とドルが存続するかぎり、1ドルが100円を超えて上がることはないだろう。原油も同じで、若干の上下の変動はあっても、今後、1バレル100ドルを超えて高騰するという事態はないだろう。中東で戦争が起きないかぎり。これらの市場の動きは信用収縮の一語で総括される現象で、原油先物も株も全て投機される金融商品であり、信用貨幣が価値を縮減させている運動が続いている。バブルで膨張を続けてきたドル派生の信用貨幣が、膨張の条件を失って価値の原状回帰へと縮減を続けているのである。イメージとしては、レバレッジ金融のビッグバンで創出され拡大された無限の信用の宇宙が、カウンターレバレッジで信用のブラックホールに吸い込まれているという図だろうか。われわれの眼には、原油が下がり、NY株が下がるという数字だけが見え、NYSEやNYMEXで市況を追うトレーダーの表情や動作しか見えないが、裏では投資銀行やヘッジファンドが慌しく資産を売却している。

NY株-1万ドル割れ、為替-1ドル101円、原油-1バレル87ドル台_b0090336_9104220.jpg債務不履行で焦げ付いた債権を処理し、損失を引当し、手元流動性を確保するために、手持ちの資産を手放しているのである。この売買はすでに投機ではなく、事業のクローズに向けての資産の処分と言えるものだ。今後、日本では株売りと共に外資保有の不動産の売却が激しくなり、ゴルフ場や都心の商業ビルが売られて値を下げるだろう。バブル崩壊後に日本の金融機関や不動産屋から二束三文のバルクで買い取った資産を吐き出す。吐き出してブラックホールの中へ消えて行く。昨夜の報道の中で気になった点として、「米国は不良債権の処理を日本より速く進めている」という言説がある。論者たちは、日本は不良債権の処理に手間取ったために不況期間を長くしてしまったという意味で喋っていて、すなわち、素早く処理している米国の方が対策として正当だという評価づけがされ、経済の再生も早くなるだろうという予想が立てられている。私はこの認識は誤りだと考える。それは違う。日本は300兆円の不良債権を処理してきたと言われるが、不良債権の処理というのは、政策技術の問題ではなく、まさに人間の労働で購うしかないもので、負債を返済するのは国民であり労働者なのだ。

NY株-1万ドル割れ、為替-1ドル101円、原油-1バレル87ドル台_b0090336_9105340.jpg人が汗水たらして働いて借金を返すのであり、簡単にどこかからカネが湧き出るものではない。日本がバブル崩壊後の不良債権処理に時間がかかったのは、それだけ借金が多かったからであり、借金を返すのに時間を費やしたからだ。政策上の問題が何も無かったとは言わないが、バブル崩壊後の借金払いの過酷さを日本人は肌身で感じて知っている。それは税金で購われるのであり、賃金カットやリストラや過労死寸前の過重労働や不払残業で購われるのであり、米国のバブル崩壊後の不良債権も誰かによって同じように購われなくてはならない。手品のように簡単に借金が減るものではなく、人が実際に働いて返すのだから、それに時間がかかるのは当然だ。日本は10年以上かかった。もし米国が、クラッシュへの速度を上げて、ハードランディングの方法で経済の再生までの時間を短縮しようと考えて策を打っているのであれば、その考え方は根本的に間違いであり、ドルの信用崩壊と米国債のデフォルトに直結する。金融機関を救済する資金は国民の税金で注入せざるを得ず、それは赤字国債で購われ、米国民の負担となるものだ。赤字国債の発行は米国民の税負担能力の限度を超えてはいけない。すなわち時間をかけて穴埋めするしかないのである。騙し騙しやるしかない。

NY株-1万ドル割れ、為替-1ドル101円、原油-1バレル87ドル台_b0090336_91142.jpg株のニュースがテレビで出るとき、必ず登場する黄色とブルーのディスプレイの電光掲示板の風景がある。道端から投資家が株価を覗き込み、テレビ局のインタビューに答えて何かを言っている。あの場所は東京駅八重洲南口の新光証券本店前で、その右隣に八重洲ブックセンターがある。最近は大型再開発で高層ビルが建ち、八重洲南口も少し風情が変わった。八重洲ブックセンターには毎日のように足を運んでいたから、新光証券の前でテレビ局が人にマイクを向けている現場にも何度も遭遇したことがある。私は年初に、東証8000円、NYSE1万ドル、為替1ドル80円、原油1バレル50ドルと予測した。米国の金融破綻の速度が予想以上に速く、衝撃も大きく、NY株は想像を超えて急速に下落している。投資銀行が不良債権を膨らませて経営危機に陥るだろうとは予想したが、まさか1年以内にリーマンの倒産にまで至るとは思わず、メリルの吸収合併も、AIGの破綻と救済も、777ドルの史上最大幅の暴落も、すべて予想の範囲を超えた。リーマンを破綻させたのは失敗だったと思う。リーマン・ショックがなければ、信用収縮はこれほど速く激しいものとならず、株価下落もマイルドに進み、公的資金注入の説得や議論にも時間をかけることができただろう。それはパニックを回避し、(騙しではあるけれど)人の心を安心させる。

NY株-1万ドル割れ、為替-1ドル101円、原油-1バレル87ドル台_b0090336_10313234.jpg東証も10/7午前に一時1万円の大台を割った。4年10か月ぶりの東証の1万円割れだが、私にはさほど大きな事件のようには感じない。ITバブルが崩壊し、株が1万円割れして底を這っていた時代をよく覚えているからであり、その後の小泉改革による「景気回復」での株価上昇が、単に外資が東京市場に入ってきただけで、日本国民の富や生活には無関係なものだという真実が直感できていたからである。現在の東証の下落は、外資(個人・機関)の引き揚げによるものであって、日本企業の業績不振が直接の原因のものではない。確かに米国や欧州の不況で輸出が減少してGDPが落ち込むのは確実であり、輸出で景気を支えてきた日本経済が苦境に陥るのは間違いない。しかし、2007年末の時点で東証の株を回していた資金の60%が外資であり、すなわち、リーマンやメリルのような投資銀行であり、東証の売買代金総額の最大手がリーマンだった事実を鑑みれば、信用収縮で経営破綻に追いやられた米国や欧州の投資銀行が東京でマネーを回す余裕などあるはずがなく、AIGが生保3会社を売却するように、東京から本国へ資金と事業を撤退させざるを得ない。60%の資金が引き揚げに出れば(信用収縮で消失すれば)、15000円だった東証が8000円になるのは理の当然で、そこに疑念を差し挟む余地は全くないだろう。

NY株-1万ドル割れ、為替-1ドル101円、原油-1バレル87ドル台_b0090336_11282191.jpg東証で株を売り買いしているのは日本人ではないのだ。彼らはNYSEの空き時間で小さな極東の市場で小遣い稼ぎのマネーゲームをしていたのである。われわれにとって東証の8000円や7000円は前提であり、何も大騒ぎする必要はなく、そこから経済を立て直して株式市場を緩やかに拡大させればよく、日本の勤労中産層が貯蓄型の投資として東証に資金を入れる循環を再生させればよいのである。日経新聞と経団連は大企業の経営者にリストラを指示し、この不況の難局を(改革と称する)人員削減で乗り切るように教導し、政府に補正予算をよこせと迫り、法人税減税をやれとせっついている。だが、リストラは国内の消費需要を落ち込ませるだけで、不況を深刻化させる縮小均衡の方向にしか経済を導かない。真の日本経済の打開策は国内市場を拡大することしかなく、そのためにはサラリーマンと地方経済に分配を戻すしかない。10年間にわたって収奪を続けた労働者の家計に、大企業が蓄積した内部留保の資金を戻入するのである。新自由主義と逆の方向にカネを回す。一昨日の「サンデーモーニング」で、バラマキの定額減税をやっても消費に回らず景気に貢献しないという議論が出ていた。確かにそのとおりだろう。しかし、それはなぜかと言えば、これまでの所得減少が苛烈すぎ、租税と保険の負担が重すぎたため、労働者家計がサハラ砂漠のように干上がっているからである。

NY株-1万ドル割れ、為替-1ドル101円、原油-1バレル87ドル台_b0090336_1128358.jpg少々の水を撒いても湿りや潤いにならないほど日本人の家計は砂漠化して干乾びているのだ。敢えて言えば、日本経済の個人消費を拡大しようとするなら、10年間収奪し続けた労働者の所得分を戻入する大規模な分配策を打たなければならない。所得を移転させなければならない。非正規雇用を廃絶し、労働分配率を1980年代の水準に戻し、貯蓄率を回復させれば、そこからようやく個人消費を本格的に回復させることができるのである。御伽話のように聞こえるかも知れないが、エコノミクスの論理から導かれる真実はそこにあり、そしてそれは、政府による適切な金利政策(円利上げ)と資産通貨政策(東アジア債券)によって確実に構想し実現することができる。原油価格が下がっていることは日本経済にとって吉報で、1バレル50ドルを切って2年前の原状を回復すれば、日本経済が好転する基礎条件が与えられる。信用収縮は他の原料と穀物の価格を確実に押し下げ、それにドル安が加われば、原材料コストは劇的に下がり、日本は以前よりも強い国際競争力を持つことになる。その製品を円建て(東アジア通貨建て)で中国とASEANと新興国に輸出すればよいのであり、そうすれば、米国市場依存のモデルを転換した新しい日本経済の構造が出来上がる。その構想を描き、構想を実現する政策を実行する政権を作ることだ。そうしたグランドデザインの議論は、すでに榊原英資や寺島実郎によって問題提起が始まっている。

勇気を出して乗り出すのだ。米国重視からアジア太平洋重視へ。資本重視から労働重視へ。

- 訂正 -
上のところで、「NYSEが1万ドルを割るのは2004年10月以来4年ぶりだが、感覚的には1万ドルを超えたのはもっと昔だったような気がする。米国経済のバブルに感覚がすっかり慣れていた」と書いたが、調べると、やはり最初に1万ドルの大台を突破したのは、1999年のクリントン政権のときだった。2001年のITバブル崩壊で2年半ほど1万ドルを割った時期があり、それが回復して再び1万ドルを超えたのが2004年10月だったということになる。ITバブル崩壊で不調だった時期を挟めば、約10年間1万ドルを超えていた時代が続いたことになる。本当に長い繁栄の時代だった。金融詐術と「グローバル経済」で他国の富を掠め取り、世界中に紙屑債券とホームレスをばら撒く虚構の繁栄だったが。

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by thessalonike5 | 2008-10-07 23:30 | 世界金融危機
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