人気ブログランキング | 話題のタグを見る

本と映画と政治の批評
by thessalonike5


S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
access countベキコ
since 2004.9.1


















世界恐慌の始まり - 米証券が、米国債が、米ドル紙幣が紙屑に
世界恐慌の始まり - 米証券が、米国債が、米ドル紙幣が紙屑に_b0090336_1135760.jpg2008年9月29日を歴史はどのように名付けて呼ぶことになるのだろう。ブラックマンデーの悪夢が再来した。下落率は1987年の22%を下回るが、今回の下落幅777ドルは過去最高。7月18日の記事で、金子勝の「世界」論文を紹介しながら、10年周期の信用恐慌について触れたが、昨日(9/29)の米国では短期金融市場の取引が全面的に麻痺停止して、語の正しい意味で金融恐慌の事態が現実になっている。議会で7000億ドルの不良債権買取の緊急安定化法案が可決されるまで、市場の不安心理は収束せず、株と債券とドルの下落は歯止めがかからない状態が続くだろう。信用デリバティブの市場は崩壊して、金融バブルは破裂したが、崩壊や破裂は原理的(概念的)に起きているもので、すなわち、金融現場の実務において格付や価格や取引や会計に数値的に反映され、損失が表面化するのはこれからで、信用収縮の規模と速度の凄まじさを人々が正しく知るのはこれからである。7000億ドルの公的資金では済まない。サブプライム分の不良債権処理だけでも不十分だ。 



世界恐慌の始まり - 米証券が、米国債が、米ドル紙幣が紙屑に_b0090336_11352150.jpg今後のオルトAと商業用不動産の債務不履行分を勘案すれば、例えば1兆ドル規模の公的資金を5ヵ年間注入するといった本格的なスキームを作成して、米金融システムの新構想を政府とFRBが発表する必要があるだろう。救済資金の財源を捻出するためには、国債の発行とそれを賄う増税しかないが、そのためにはイラクとアフガンでの戦争で膨らんだ軍事費の削減を断行するしかない。そして、共和党政権下で優遇されてきた企業や高所得者や投資家への課税強化が必須であるはずで、日本と同様に、税制面での新自由主義政策の放棄と転換が問題になることになる。10月中に戦争が勃発するなどの不測の事態が起きないかぎり、大統領選はオバマの勝利が確定だが、実際のところ、米国にはそんな悠長な政治ショーを楽しむ時間的余裕などないはずで、私に言わせれば、一刻も早く大統領選のお祭り騒ぎを終わらせて、新指導者のオバマが「ニューディール政策」を世界に宣言しなくてはいけない。不良債権買取法案の議会審議が大統領選直前の時期になったのは米国の不運だった。

世界恐慌の始まり - 米証券が、米国債が、米ドル紙幣が紙屑に_b0090336_11353455.jpg共和党の下院議員が合意への造反に動いたのは、ペロシ議長による法案説明の中にブッシュ政権と共和党を批判する文言があったからだと言われている。これは卑劣な責任転嫁の主張で、共和党議員たちが、救済法案に感情的に反発する国民世論に迎合し便乗しながら、この期に及んでも市場原理主義の思想信条を貫き、党利党略で民主党に打撃を与えようと姑息に動いた詭弁である。世界の金融市場に対する悪影響は計り知れない。G8の中央銀行総裁は声明を発表して、共和党の造反議員を糾弾するべきで、米国の国民に緊急安定化法の早期成立を説得すべきである。株価の下落と市場の混乱を見て、法案に反対した造反議員も態度を変えるだろう。だが、法案が可決成立になるまでの数日間に恐慌の事態がどこまで悪化するか想像もできない。法案は通過すると誰もが予想していたから、今度は法案否決を口実にした責任転嫁の悪徳行為が市場で横行し、相互不信が連鎖して金融恐慌の程度を甚大にする恐れがある。株の次はドル危機で、1ドル100円を割って下がり続ける。私は年末までに1ドル80円と予想した

世界恐慌の始まり - 米証券が、米国債が、米ドル紙幣が紙屑に_b0090336_11355680.jpgドル下落は輸入品物価を高騰させ、米国のインフレに拍車をかける。しかしFRBは金利を上げられず、金利政策は問題解決の有効な手段にならない。株下落とドル下落は米国の実体経済に確実に打撃を与え、消費を落ち込ませ、倒産と失業を増やし、7-9月期と10-12月期の2四半期連続のGDPマイナスを出して、米国経済のリセッションを確定させることだろう。米国債も大きく下落する。米国の銀行数の1割にあたる700行の地銀が破綻すると予想されている。今年の米国のクリスマスは極寒の中にある。オバマは新年の年次教書で「ニューディール政策」を打ち出さざるを得ず、増税と撤兵による財政再建が緊急課題になるだろう。欧州でも金融機関の破綻が始まった。一般には、欧州の金融危機は米国のサブプライム問題の余波と報道されているが、実際にはもっと根深い病巣があり、欧州でも米国と同様に住宅バブルの崩壊が起こっているのである。この件は、SAPIOの最新号で記事になっていて、また「世界」10月号の金子論文でも言及されている(P.135)。欧州諸国の住宅バブルが米国以上に甚だしかった事実を私は知らなかった。

世界恐慌の始まり - 米証券が、米国債が、米ドル紙幣が紙屑に_b0090336_113687.jpg1990年代半ばから10年間の住宅価格の上昇率が、米国は58%だが、英国201%、ノルウェー184%、アイスランド207%と異常に高い伸びになっている。このバブルが崩壊しはじめた。欧州経済の堅調な推移について、昨年末までの私の見方は、米国の新自由主義モデルとは異なる福祉国家モデルの成功と繁栄と映り、特に省エネの未来型の産業と経済に注目させられていたが、その積極的な観念と表象が少し怪しくなってきた。今年の初め、例の温室効果ガスの排出量取引について、欧州が市場を主導する姿をNHKが取材紹介していて、その映像を見ながら、何となく新自由主義の臭いを感じて違和感を覚えたことがあったけれど、その懸念と直感が的中したような思いがする。欧州の経済成長も福祉国家ではなく新自由主義によって少なからず媒介されていた。であるとすれば、金融恐慌と景気後退は間違いなく欧州をも直撃する。中国や日本と違って製造業が弱く輸入依存の割合も高い欧州の打撃は小さくない。特に影響が大きく出るのは、金融産業が経済全体の中に占める比重がより大きな英国だろう。10年間、ずっと好景気が続いてきた欧州経済が低迷に入る。

これから何が起きるか。予測は簡単で、紙屑が増えるだけだ。ただし、それには順番がある。まずサブプライム関連証券が紙屑になった。次は、現在進行中だが、それ以外の米債券が紙屑になる。その次は米国債が紙屑となる。そして最後に米ドル紙幣が紙屑になる。恐慌とは紙屑が増えることである。

世界恐慌の始まり - 米証券が、米国債が、米ドル紙幣が紙屑に_b0090336_17193954.jpg
世界恐慌の始まり - 米証券が、米国債が、米ドル紙幣が紙屑に_b0090336_11363975.jpg
世界恐慌の始まり - 米証券が、米国債が、米ドル紙幣が紙屑に_b0090336_12573058.jpg

by thessalonike5 | 2008-09-30 23:30 | 世界金融危機
<< 米国債のデフォルト - 信用を... 昔のIndexに戻る NHKスペシャル『決戦前夜』 ... >>