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本と映画と政治の批評
by thessalonike5


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福田首相の無責任辞任と政治の液状化- 「改革」復活を危惧する
福田首相の無責任辞任と政治の液状化- 「改革」復活を危惧する_b0090336_231365.jpg改造内閣を組閣してわずか一か月で突然の総理辞任。会見の後の報道番組のスタジオでも話題になっていたが、二世議員である福田首相の無責任とひ弱さとわがままが際立つ。昨年の安倍晋三と同じ放り投げ辞任であり、自分の立場や周囲の迷惑を省みない自己中心的な進退の決定であり、権力を持つ者の何たるかの心構えがない未熟さに呆れる。消費者庁の準備のために入閣した野田聖子や、景気対策の取りまとめのために財務省と公明党の間で四苦八苦した与謝野馨の立場はどうなるのか。記者会見で、本人は「党にとって最もよい判断」という意味の釈明をしていたが、現実には、自民党と日本の政治の歴史に汚点を残す異常な首相の責任放棄であり、後世まで汚名が語り継がれる軽率な行動であることは明らかである。辞任に追い詰められた事情を考えると、同情の余地が全くないわけではないが、苦しい境遇に身を置いて我慢しているのは福田首相以上に一般国民であり、国民のために政治をしている指導者の任務を考えるべきだった。



福田首相の無責任辞任と政治の液状化- 「改革」復活を危惧する_b0090336_231494.jpg少なくとも福田首相は外交では評価できる実績を上げていた。小泉純一郎が破壊した中国との信頼関係を修復する成果を上げていたし、小泉改革で切り捨てられた弱者や地方に対して、徐々にではあるが政策の関心を取り戻す方向に政治を向かわせつつあった。小泉・竹中の構造改革を疑い、改革という名の新自由主義路線から離脱し決別する政策を明示しつつあった。その点では早すぎる辞任は残念に感じる。外から眺めて、客観的に見て、日本の政治は堕落と退廃と液状化の終末的様相を極めていて、未熟で幼稚で無責任な、国民の政治的期待に応えられない無能な者たちが、指導者の要職にあって見苦しく醜態を晒しまくる。それは自民党の指導者だけではない。民主党の指導者も同じだ。昨年9月から1年間の間に、9月の安倍晋三の放り投げ辞任、11月の小沢一郎の大連立騒動、今度の福田康夫の投げ出し辞任と、諸外国に恥かしい政治指導者のドタバタ騒動が三度も続いた。悲惨と言うほかに言葉がなく、日本人であることに羞恥して赤面せざるを得ない。

福田首相の無責任辞任と政治の液状化- 「改革」復活を危惧する_b0090336_232020.jpgテレビ報道では、公明党に押しまくられて国会日程さえ主導できなかった事情や、新テロ特措法の不成立で米国に対して国際公約の立場を失う問題で追い詰められていたと辞任の理由が解説されていたが、会見の言葉の中身をよく聞くと、やはり太田誠一の事務所費問題が最も大きく、国会で追及を受けて、支持率が10%を切る最悪の事態を恐れていたように見える。太田誠一の問題が出なければ、11月か12月までは政権を維持して麻生太郎に禅譲する気だっただろう。追い込まれ更迭に至れば、一寸の国会の舵取りの誤りで追い込まれ解散になる。公明党は解散は早ければ早いほどよく、福田首相の足を引っ張って麻生政権への禅譲の時期を急がせただろう。11月辞任となれば、あと2ヶ月後、福田首相にとってはあまり変わらないのである。それならすぐに自分が辞任すれば、自民党には総裁選の時間が取れ、体勢立て直しの余裕が十分確保される。そう判断したのではないか。「党にとって最もよい」判断の意味はそういうことだ。禅譲を遅らせるよりも早めた方が自民党の選挙上得策となる。

福田首相の無責任辞任と政治の液状化- 「改革」復活を危惧する_b0090336_2321256.jpg今後の総裁選の行方と政局だが、混沌として波乱含みの状況になってきた。マスコミで報道されているように、総裁選では小池百合子が改革派の代表として担がれる可能性が高い。担ぐのは表方が中川秀直、裏方が小泉純一郎。小池百合子が立てば、間違いなく麻生太郎の対抗馬となり、マスコミの声援を受けて本命を蹴落とす可能性もある。新聞もテレビも改革派の小池百合子を応援する。古館伊知郎や朝日新聞の論調に典型的だが、新自由主義に染まったマスコミは、麻生太郎や公明党の「バラマキ」が不愉快で、それを潰したい衝動に疼いている。小泉改革の路線に一刻も早く戻したいのであり、電通組は迷わず「上げ潮派」を応援する。だから、麻生太郎と小池百合子の一騎打ちとなった場合は、マスコミは確実に小池百合子の側に立つ。地方組織は麻生太郎につく。最大派閥の清和会を仕切る森喜朗は、禅譲の約束の手前、麻生太郎を担ぐことになるが、この男は小泉純一郎とも簡単に裏で手を結ぶ。寝業師の森喜朗が裏で小泉純一郎と手を握って、麻生太郎から小池百合子に鞍替えの目もある。

福田首相の無責任辞任と政治の液状化- 「改革」復活を危惧する_b0090336_2324650.jpg小池百合子が自民党総裁になれば、すなわち日本初の女性総理誕生となる。マスコミは宣伝に力が入るだろう。総裁選は一か月ある。立候補するのは、麻生太郎と小池百合子と谷垣禎一で、谷垣禎一は例によって刺身のツマの配役で楽しく政策論争を演じる。一か月あれば政治の空気は変わる。マスコミが宣伝漬けにすれば、視聴者は簡単に洗脳される。ネガティブな表象と化しつつあった「改革」は息を吹き返し、「増税なき財政再建」と「経済成長による所得増」が喧伝され、経済指標の悪化は、竹中平蔵が悉く「改革の後退」の所為にする。総裁選の結果はどうなるか分からないが、9月の一か月間、テレビは初の女性総理誕生かを騒ぎたて、代表選をやらなかった民主党は蚊帳の外になる。国会も開かないので、ニュースになる政治の話題は、麻生太郎と小池百合子の総裁選ばかりで埋められる。小池百合子がミニスカート姿でテレビ出演する。視聴率が上がる。小池百合子が改革路線復活を訴える。古館伊知郎が嬉しそうに頷く。もし仮に麻生太郎が総裁選を制した場合、小池百合子ら改革派は党を出る可能性もある。

すなわち離党して新党を結成、前原誠司を糾合して衆院選を戦う。いずれにしても、新自由主義の陣営にとっては、復活の最大の機会が到来した。改革派がイチシアティブを奪い返しに来る。
福田首相の無責任辞任と政治の液状化- 「改革」復活を危惧する_b0090336_2325756.jpg

by thessalonike5 | 2008-09-02 23:30 | 政局
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