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本と映画と政治の批評
by thessalonike5


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メドベージェフ大統領の2自治州独立承認声明とネオコンの陰謀
メドベージェフ大統領の2自治州独立承認声明とネオコンの陰謀_b0090336_1139187.jpg昨日(8/27)の朝日新聞の一面は、ロシアが南オセチアとアブアジアを承認した問題が取り上げられ、メドベージェフ大統領の写真とともに大きく掲載されていた。朝日の記事は国際面にもあるが、なぜロシアがこうした「新冷戦への懸念もあるが、われわれが恐れるものは何もない」という大胆で深刻な決断に踏み切ったのか、メドベージェフが声明の中で説明している肝心な理由については一言も紹介していない。産経新聞は、この問題の報道では終始一貫して米国側に立ってロシアを批判する論調が鮮明だが、声明で触れている2州独立承認の理由については漏らさず 記事で紹介している。メドベージェフはこう言っている。「(グルジアは)8月8日に、ジェノサイドの決断を下した。まるで処刑のような爆撃で、多くの市民が犠牲になった。こんな賭けに出れるのは狂気の男だけだ。われわれは我慢の限界を超えた」。これは国家元首である大統領の声明である。声明の中に、8/8のサーカシビリの騙し討ちによる無差別大量虐殺的な軍事侵攻が怒りをこめて明確に指弾されている。この点を私は最も早い時期にブログの記事で指摘していた。



メドベージェフ大統領の2自治州独立承認声明とネオコンの陰謀_b0090336_11393648.jpgこの事実こそが決定的に重要なのであり、少なくとも、ロシアがグルジアの主権を犯して領域に軍を侵入させた今回の軍事行動の正当性の根拠なのである。この事実は絶対に無視してはならず、報道から省略してはならない。事実を疑うのであれば、ジャーナリズムはそれを厳密に検証しなければならないはずだ。朝日新聞を含め、日本のマスコミは完全に米国側に偏向した報道を行っている。戦争が始まるとメディアは極端に公平性を失う。9・11以降の「テロとの戦い」の名のアフガン戦争、大量破壊兵器を持っているという根拠のない言いがかりで侵略したイラク戦争、そして今度のグルジア戦争。戦争ではないが、今年のチベット暴動と北京五輪の聖火リレー報道。米国が関わる戦争が始まると、日本のマスコミはCNNやFOXの代理店になり、米国政府の認識や見解を流布する広報宣伝機関となる。昔はそうではなかった。ベトナム戦争の頃の日本のジャーナリズムは米国一辺倒ではなかった。今度のグルジア戦争が何なのか、ロシア側からの視点での報道や解説が皆無に近い。一部には、袴田茂樹を解説に立てたNHK-BSの「今日の世界」のような例外もあるが。

メドベージェフ大統領の2自治州独立承認声明とネオコンの陰謀_b0090336_11395458.jpgそして、自分は常に公平中立だと思い込んでいるブログ左翼が、日本語の新聞記事とテレビニュースの情報だけで、一方的にロシアの侵略だと非難する愚かな情景が眼前にある。この問題をめぐる国内のこれまでの言論の中で、最も正確で必要十分な解説を提供しているのは、田中宇の8/19の「米に乗せられたグルジアの惨敗」の記事である。最後の、持論である「多極化論」に展開して着地させている点だけが引っ掛かるが、それ以外は完璧な出来で、構成も中身も満点に近い。グルジア問題を論じた日本のジャーナリズムの水準を田中宇が示している。この記事がわれわれの認識のベースだ。この記事は、今後の国内のグルジア問題の言論と世論に大きな影響を与え、きわめて重要な位置と意味を持つことだろう。マスコミが果たせない役割をネットが果たしている好例である。私も8/11の記事で少し触れたが、サーカシビリ政権の政治的性格、旧政権を打倒してグルジアの権力を奪取した経緯、いわゆるバラ革命の内幕と背景、米国とサーカシビリ政権との関係、特にマケインとサーカシビリ政権との薄汚いカネの繋がり、それらの知識が入るか入らないかで、グルジア問題を見る視点は根本的に違ってくる。

メドベージェフ大統領の2自治州独立承認声明とネオコンの陰謀_b0090336_11413468.jpg今度の戦争のキーワードは「ネオコン」である。イラク戦争の泥沼化で懲り、ブッシュ政権の終焉と共に消滅するかと思っていたネオコンが、またぞろ忌まわしく国際政治の表舞台に首を擡げた。この問題を「ネオコン」の言葉を使って論じている田中宇は、国際情勢のアナリストとして優秀である。ここで詳細を検証できないのは残念だが、戦争が勃発してからの米国政府の動きを注意して見ると、幾つか興味深い点に気づく。8/8は北京五輪の開会式で、戦争が起きているのにブッシュ大統領はずっと北京に滞在して米国の選手団を応援していた。グルジア問題は意に介せずと無関心に放置している具合に見え、そのことがわれわれには異常に見えた。そして2日後か3日後に、北京のブッシュからではなく、初めてホワイトハウスからグルジア擁護とロシア非難の強いメッセージが出たが、それを発したのは副大統領のチェイニーだった。国務長官のライスではなかった。何日間くらいだろう、記憶では5日か6日の間、ライスは表に出ず、グルジア問題について一言も公に発言しなかった。ライスがプレスの前に出たのは、ブッシュが北京を発った直後だったはずで、その頃はグルジア軍とサーカシビリは、南オセチアに対する騙し討ち的なヒットアンドアウェーを終えて首都に引きこもり、支援に来ない米軍に怒り心頭に達していた。

メドベージェフ大統領の2自治州独立承認声明とネオコンの陰謀_b0090336_11404056.jpgブッシュ大統領がずっと北京の五輪会場に居続けたのも奇妙だったし、ライス長官が長く沈黙したままだったのも不自然だった。この戦争はネオコンが仕掛けたものだ。ライスと国務省は、南オセチア軍事侵攻の情報を知らされてなかったのだ。チェイニーが黒幕である。ブッシュが北京で五輪を観戦していたとき、サーカシビリの身を守るべくロシアとの間に割って入って調停を纏めたのはサルコジだったが、この男も素性をよく考えればネオコンのヨーロッパ支部長である。「陰謀」という言葉を使うと、忽ちブログ左翼の言葉狩りの標的にされるので躊躇を覚えるが、今回の件は「ネオコンの陰謀」という基本視角で全体を掘り下げるのが正しい見方だと思われる。米国の戦争にはネオコンが付き物で、こうして疫病神のように出てきて必ず世界を戦争に導く。この戦争によってマケインは支持率でオバマを逆転した。米国と世界は依然としてネオコンに支配されている。朝日新聞は、ロシアの2自治州独立承認をCISの相互領土保全保証の合意を覆す行為だと批判し、暗に国際法違反だと咎めているが、サーカシビリはすでにCIS脱退を表明していて、さらに何度も言うように、南オセチアは当初から半独立状態で露軍が平和維持部隊として駐留していた。

メドベージェフ大統領の2自治州独立承認声明とネオコンの陰謀_b0090336_11434636.jpg国際法違反を言うのなら、ツヒンバリを包囲して無差別なミサイル砲撃で大量の民間人を殺傷したサーカシビリの「人道に対する罪」を真っ先に問うべきだろう。昨夜(8/27)の報道ステーションでは、ロシアの2州独立承認を「国旗」を振って祝福歓喜する南オセチアアブハジアの住民の映像が放送されていた。番組の中では、古館伊知郎が「石油の争奪」を強調して、特に中身の解説もなく、その一言だけで全てを語りつくしているかの如く得意満面になっていたが、田中宇も述べているとおり、石油の問題は第一のキーモメントではない。ネオコンによるロシア周辺の揺動作戦こそがキーであり、西側では「民主化運動」と呼ばれ、現地では「革命」と呼ばれるところの、ネオコン・ネオリベ勢力によるロシアの体制転覆の陰謀と、安全保障上の均衡破壊こそが問題なのである。歴史的に、特に西側からの侵略を何度も受けてきたロシアは、領土保全の警戒心が強く、防衛本能と強迫観念が外側に向かう帝国主義的エクスパンションに転化しやすい。19世紀のナポレオン、20世紀のヒトラー、それら侵略軍が深くモスクワまで侵攻して国土を蹂躙した後は、ロシアは怒涛の如く反撃して勢力を西漸させ、国境を西へ西へ押し戻すのである。そのため、ポーランドは絶えず国境が変わり、版図が変わり、国土が東へ西へ移動し、領土が消滅したり復活したりする。

メドベージェフ大統領の2自治州独立承認声明とネオコンの陰謀_b0090336_11401343.jpg20世紀、1945年、スターリンの赤軍は遂にロシアと欧州の勢力圏の境界をエルベ河まで西に押して動かした。ロシアが西に広がった歴史上の「最西不倒」の到達点である。それから半世紀、冷戦が終わって「境界」は今度は東に動き始め、旧東欧諸国、さらには旧ソ連のバルト三国がEUとNATOに加盟、ロシアは安全保証上の「防波堤」を侵食されて「丸裸」同然の状態になっていた。さらにCISのウクライナとグルジアとキルギスタンで「民主化」(=「革命」)が起き、ロシアを圧迫する包囲網はヨーロッパ平原から南下してコーカサスから中央アジアに及び、ロシア側から見れば、周辺をぐるりと敵に軍事的に包囲される緊張状況に陥っていたのである。ウクライナのNATO加盟をNATOが承認すれば、ウクライナ国内が内乱と分裂の状態になる。ネオコン・ネオリベは次にベラルーシの転覆を狙っていて、ベラルーシを「革命」すれば、ロシアは完全に「丸裸」になる。逆に欧州から見れば、半世紀間の赤軍と共産党の東欧支配があり、それがロシアに対する本能的な恐怖心と警戒心となって残り、政治や世論の大勢を支配している。いつロシア地上軍がエルベ河の「最西不倒」を郷愁するか分からない。グルジア問題解説のベースとして提供されなくてはならないのは、こうした歴史や情勢の知識であり、「石油の争奪」や「大国のエゴ」の断片的な言葉で全てを語ったり理解できると思うのは間違いだ。
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【世に倦む日日の百曲巡礼】

今日の一曲は、1984年の 谷村新司 のデュエット曲で 『忘れていいの』 を。

「百曲巡礼」を始めたときから、小川知子 が「夜ヒット」で歌う伝説のライブが YouTube に上がるのをずっと待っていたのですが、とうとう待ちきれませんでした。残念無念。不本意ながら、今回は 石川さゆり でご紹介。誰か小川知子のドラマティックなお宝映像を持っている人はいませんかね。

と言いつつ、この頃の石川さゆりは何ともきれいですね。悩ましい。この美貌に男はコロッと騙される。


小川知子、黛ジュン、中村晃子、今陽子..。阿久悠と「スター誕生」が売り出した、いわゆる70年代のアイドルたちが芸能界を席巻していたころ、その前の60年代に活躍して旬を過ぎた歌手たちは、ほとんど例外なくと言っていいほど、平凡パンチやプレイボーイの誌上で裸になっていた。事務所が仕事としてそうさせたのだろうし、業界的にそれが自然だったのだろう。時代を感じさせられたけれど、70年代のアイドルたちは歌が売れなくなっても脱ぐ必要はなかった。そこにも時代を感じさせられた。
 
by thessalonike5 | 2008-08-28 23:30 | 米国大統領選・グルジア情勢
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