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本と映画と政治の批評
by thessalonike5


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衛藤征士郎の正論 - 「日朝平壌宣言を鑑として正常化の実現を」
衛藤征士郎の正論 - 「日朝平壌宣言を鑑として正常化の実現を」_b0090336_1710051.jpg拉致問題の世論について最近感じるのは、その関心が一般にあまり高くないという事実である。テレビ報道では北朝鮮や六カ国協議の話題がニュースになると、そこに必ずと言っていいほど家族会の人間の姿が出る。拉致被害者家族の顔が出て生の声が放送される。しかし、ネットのニュース記事の中には拉致被害者家族の情報は何も載っていない。北朝鮮に関わる記事の報道のあり方はテレビとネットでは大きく異なる。ネットでは淡々と記事が配信されるが、テレビではそれは拉致被害者家族の視線から捉えられたニュースに加工され編集されている。放送時間も長い。そして、ネットで北朝鮮関係の新しいニュースが出ても、それに対する反応は、以前の状況からは想像もできないほど鈍く、ニュースを提供している側の感覚で言えば、「食いつきが弱い」状態にある。恐らく、テレビのワイドショーでの拉致問題報道も嘗てのように高い視聴率は取れない現実があるに違いないのだ。



衛藤征士郎の正論 - 「日朝平壌宣言を鑑として正常化の実現を」_b0090336_13464225.jpg人々が拉致問題の報道に倦み飽きているのである。毎度出てくる同じ顔の同じ言葉に辟易としているのだ。マスコミは国民の家族会への同情と北朝鮮への憎悪を必死で煽り立てる報道をしているが、当の国民の方が関心の熱が冷め、マスコミの扇動に振り回されなくなっているのである。イデオロギーである「拉致問題」の鍍金が剥げてきた。『世界』7月号の蓮池透インタビュー記事の内容は意外だったが、昨夜のニュースの増元照明の映像を見ていても、何となくシラケた気配が表情に漂っている。私はあの拉致被害者家族会の中で、増元照明には他と違って善良な市民の印象を受ける。国民の前で嘘をついて演技をする政治家ではなく、嘘をつけない一般市民の心の純朴さを感じる。きっとどこかの時点で、次は増元照明が欺瞞に耐え切れずに真実を暴露するだろう。蓮池透の「寝返り」に続くだろう。横田早紀江の言葉や表情には切実さが感じられない。言葉が政治家の演技のように聞こえる。

衛藤征士郎の正論 - 「日朝平壌宣言を鑑として正常化の実現を」_b0090336_14261458.jpg本当は娘の消息の真実を知っているのではないか。知っていながら、それを隠して、家族としての素朴な心情からではなく、政治的な意図と目的で国民に向かって対北朝鮮強硬論を扇動しているのではないか。拉致被害者家族に対する批判は誰もやらない。絶対にやらない。タブーだ。公の言論空間でそれをやっているのは日本中で私一人だ。辺見庸ですらやらない。私はやる。それは誰もが薄々感じていることである。国民の多くは横田早紀江に一度は深く同情したものの、安倍晋三や中山恭子やマスコミの右翼政治と右翼言論のいかがわしさに気づき始め、横田早紀江が単に右翼に利用されて踊らされているのではなく、自ら率先して右翼的な扇動政治の旗を振っている真実を見抜き始めた。魔法が解け始めている。日本中を毎日講演して歩いている旅費はどこから出ているのか。庶民の眼差しは、今、そういうところに向けられ始めている。本当は全て折り込み済みで、キムヘギョン来日永住で着地点は決まっているのではないか。

衛藤征士郎の正論 - 「日朝平壌宣言を鑑として正常化の実現を」_b0090336_13471368.jpg福田首相の昨日の北朝鮮テロ支援国家指定解除を容認する発言は、本人の政治意思を強く反映したものであると同時に、官邸による国民の秘密世論調査のデータを踏まえた上での踏み込みだろうと私は想像する。強気に出ている。これからマスコミは北朝鮮強硬論をじわじわとフェイドアウトさせ、政府の路線にアラインして行くだろう。すでに政治家は寝返りを始めている。『世界』7月号に平沢勝栄が記事を寄せていて、ブログの読者はぜひお読みになるとよい。世論に最も敏感に反応して、柳が風にそよぐように自民党のイメージを世論に合わせる演出家の平沢勝栄。機を見るに敏な者から言を転じ始める。政治家の次は評論家、その次がマスコミ右翼で最後が報道キャスターだろう。世論を煽りながら世論に迎合して「業界」で生きているマスコミ右翼の勝谷誠彦も必ず転向する。対北朝鮮融和路線の流れは決まったも同然で、政界では安倍晋三だけが強硬論を咆えている。その姿は滑稽で、誰も安倍晋三と心中したいとは思わない。

衛藤征士郎の正論 - 「日朝平壌宣言を鑑として正常化の実現を」_b0090336_1452750.jpgこの政治状況を理解していない者がいる。強硬論から融和論への流れはむしろ右側で明確な潮流になっていながら、左側で制裁論にしがみついている者たちがいる。ネットの一部で、日朝平壌宣言を矮小化する議論が横行して、なぜかそれがブログ左翼に支持されるという奇怪な情景がある。日朝平壌宣言を矮小化する議論は、立場としてまさに安倍晋三と同じ反動右翼であり、木を見て森を見ない議論と言えるだろう。日朝平壌宣言は、一人の総理大臣や一人の外交官による所産ではない。長い日本の戦後平和外交の延長線上にある思想が文書化されたものである。そこには何と書かれているか。「日本側は、過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明した」。このような重い歴史的文言を、事務に直接関わった当事者個人のスタンドプレーに還元し矮小化して否定的に言うのは間違っている。この宣言は個人に従属するものではない。

衛藤征士郎の正論 - 「日朝平壌宣言を鑑として正常化の実現を」_b0090336_13475992.jpg日本国の意思である。戦後日本の言葉である。日朝交渉は金丸訪朝以来17年の長い長い歴史があり、まさに日本国はこの言葉を北朝鮮に言って国交正常化を果たすために、長い時間を費やし、多くの政治家と外交官をこの戦後処理の仕事に携わらせてきたのである。田中角栄は子分たちに言った。「オレは日中正常化をやって歴史に名を残した。今度はお前らが日朝正常化をやって名前を残せ」。金丸信の訪朝は田中角栄の啓示に単純に従ったものである。角栄の子分は全員がオヤジに忠実に動くところがかわいい。小沢一郎が幹事長時代に、何か剛腕が裏目に出て国内政治で失脚しかけたとき、まさにスタンドプレーで(1兆円のカネを鞄に入れて)日ソ平和条約を締結するべくモスクワに飛んだことがあった。名前を残したい自民党の政治家にとって、日朝国交正常化と日露平和条約の二つが、残っている大きな「華」なのである。誰が首相で誰が担当外交官であっても、誰が当事者であろうと、日朝国交正常化の宣言は同じ文言になる。

衛藤征士郎の正論 - 「日朝平壌宣言を鑑として正常化の実現を」_b0090336_13474334.jpg『世界』7月号の特集「対北朝鮮-いまこそ対話に動くとき」の中で蓮池透の記事と並んでインパクトが大きいのは、衛藤征士郎インタビュー記事である。衛藤征士郎は自民党の衆議院議員で福田首相の側近でもある。記事の中でこう言っている。「福田総理は日朝平壌宣言を高く評価されていると思います。私は宣言を高く評価していますし、その精神はもちろん引き継がれています。私どもがこれからやらんとするところは、平壌宣言をしっかり踏まえて日朝国交正常化の駒を進めていくということなのです。平壌宣言を鑑として日朝国交正常化を実現する。そういう決意、覚悟ですね」(P.145)。これは自民党の国会議員が言った言葉である。社民党や共産党の議員の言葉ではない。山崎拓の議連の動きがすでに自民党のサイレント・マジョリティである事実が理解できる。日朝平壌宣言に対する再評価や発見を左翼のイデオロギーに基づくものであるかのように誹謗し貶める議論が、どれほど現実離れした偏狭で不当でイデオロギッシュな暴論かが分かる。

衛藤征士郎の正論 - 「日朝平壌宣言を鑑として正常化の実現を」_b0090336_21552689.jpg衛藤征士郎は次のようにも言っている。「日本はかつて北朝鮮を侵略して甚大な被害を国家と国民にもたらしているのですから、当然われわれとしても、その事実を重く両肩に背負い込まないといけないのです。そして誠意をもって、ていねいに、北朝鮮と話し合うテーブルづくりから始めていく。それを議員外交でやっていこうではないか、と考えているのです」(P.146)。『世界』7月号の特集のメッセージとして明確なのは、安倍晋三に対する徹底的な批判という点であろう。標的は安倍晋三。安倍外交の失敗としての拉致問題という構図が見事に浮き彫りにされている。そしてこの把握は社会科学の認識として正しい。あのとき、小泉訪朝の後に日朝国交正常化をぶち壊して正義のヒーローになったのは安倍晋三だった。悪役に回ったのは、「8名死亡2名不明」を受け入れて、政府トップとして飯倉会館で拉致被害者家族の説得に当たった福田首相(官房長官)だった。歴史の皮肉と言うべきか。ようやく舞台が一回転して、安倍晋三の反動性と不当性が露わになる局面が到来した。

日朝平壌宣言に対する評価は、実のところ、左側ではなくて右側からの方が明確だった。静岡県立大学の伊豆見元がその代表格である。左派の陣営が世論とマスコミの攻勢の前に次々に日和り、遂には経済制裁支持にまで回るという窮みまで落ちて右翼と一体化したときでも、右派の伊豆見元は堂々と「拉致問題より核問題の方がずっと大事だ」と言い放ち、救う会や家族会に対して一歩も引かない剛毅な態度を示していた。


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【世に倦む日日の百曲巡礼】

ということで、今日は1970年の ヒデとロザンナ の名曲の 『愛は傷つきやすく』 を。

いろいろな出来事があった2年前を思い出しながら、この曲を聞きなおそう。すべての風は安倍晋三のために吹いていた。2年前はYouTubeはなかった。予想されたことだが、曲題で検索をかけると、Googleで第5位に記事が入ってくる。素敵。もうすぐキムヘギョンの2年ぶり3度目の登場がある。2002年10月の15歳のとき、2006年6月の19歳のとき、今は21歳になっている。ヒデの死から18年、ロザンナも58歳、最近はテレビにも全く出なくなった。


それと、日朝平壌宣言を不当に貶める者たちは、六カ国協議についても、米国が主導して北朝鮮の核開発を放棄させるためにつくったもののように言っているが、言うまでもなく、六カ国協議の議長国は中国である。2002年の年末から2003年の年始にかけて、一触即発の開戦の危機にあった米朝の間に体を割り込ませて戦争を阻止した韓国と中国の外交は素晴らしかった。歴史に残る肉弾戦の平和外交。特に、誕生したばかりの韓国盧武鉉政権の平和外交攻勢は凄まじかった。ラムズフェルドの「二正面作戦」(=イラクと北朝鮮)の脅しは中韓の気迫の前に後ずさりを余儀なくされ、北朝鮮問題については宥和派のパウエルとの矛盾均衡の形でその後の2年間が続くことになる。

by thessalonike5 | 2008-06-25 23:30 | 北朝鮮拉致問題
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